リビン・テクノロジーズが20周年 リビン・テクノロジーズが20周年
東証上場 リビン・テクノロジーズ株式会社(東証グロース上場)が運営するサービスです  証券コード:4445
通話・相談無料:9時~18時(年末年始を除く)tel:0120-139-179

不動産の二重譲渡はなぜ起こる?対抗要件と所有権の関係をわかりやすく解説

更新日:
不動産の二重譲渡はなぜ起こる?対抗要件と所有権の関係をわかりやすく解説

不動産の二重譲渡とは、同じ不動産を複数の買主に譲渡することです。しかし、不動産はひとつしかないため、当然トラブルに発展します。

二重譲渡は、故意に発生することもありますが、売主が知らずに発生するケースもあります。

2人の買主のうち、実際に不動産を取得できるのはどちらなのでしょうか。

本記事では、不動産の二重譲渡について具体例を用いて解説します。また、権利を主張するための対抗要件と所有権の関係も理解しておきましょう。

二重譲渡とは

不動産に同じものは2つないので、ひとつの不動産を複数の買主に譲渡する二重譲渡は物理的に不可能です。

しかし、民法176条には、以下のような規定があります。

物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

e-Gov法令検索「民法」第百七十六条

つまり、複数の買主に譲渡する意思表示や意思確認は可能です。

しかし、同じ不動産は2つないため、二重譲渡をするとトラブルに発展します。ここでは二重譲渡により生まれるトラブルと、具体的なケースを紹介します。

二重譲渡が原因のトラブル

二重譲渡をしても、所有権移転登記ができる買主はひとりだけです。所有権を得られなかったほかの買主は、目的の不動産を取得できません

たとえば、買主がAとBの2人いたとし、所有権移転登記により不動産を取得できた買主をAとします。

買主Bも売主から不動産の引渡しを受ける権利があり、売主は買主Bに対して債務があります。しかし、売主はすでに買主Aに所有権を移転してしまったので、買主Bに対して不動産の引渡しができません。

つまり売主は、債務不履行になります。買主Bが売主に対して契約解除と損害賠償を求めると、売主はこれに応じる必要があります。

また、契約解除に伴う違約金は売買契約書に定めていますが、損害賠償額については決められていません。そのため合意が得られない場合は、裁判に発展する可能性が高いです。

売主の責任

二重譲渡をした売主が責任を負うのは当然のことです。たとえ二重譲渡の原因が、売主の故意ではなく過失であっても責任が問われます

前述したように、売主の義務である所有権移転と引渡しができないと、債務不履行による契約違反のため、損害賠償責任が生じます。

また、刑法の視点からは、横領罪や詐欺罪に該当するおそれがあります。

前述の買主AとBの関係に当てはめてみます。 本来は買主Bに引渡しすべきものを買主Aに引渡した場合、買主Bが所有するはずであった不動産を売主が横領したと解釈できます。そのため、横領罪が成立すると考えられます。

また、買主Bに引渡すつもりはなかったのに、「買主Bに引渡す」とだまして契約手付金を受領し、買主Aに引渡したとも考えられます。これは、詐欺に該当するという考え方が成り立ちます。

売主が二重譲渡を行った場合、損害賠償責任を問われるだけでなく、刑法犯となるおそれがあることを理解しておきましょう。

買主の責任

二重譲渡では、買主Aには責任がないのでしょうか。

買主Aが、売主と買主Bが契約を締結したことを知ったうえで、登記をして引渡しを受けたとします。

買主Bがその事実を知った場合、買主Aの買主Bに対する不法行為であると主張する可能性があります。

しかし、二重譲渡により所有権移転登記を行い対抗要件を有した買主は、ほかの買主に対する責任を負わないという最高裁判例があります。つまり、買主Aが買主Bに対して何らかの責任を負担する、法的な根拠はないとされています。

ただし、法解釈や社会の受け止め方は変化するものであり、二重譲渡については判例研究において議論がされています。今後も「二重譲渡により登記をした買主に責任はない」といった判断が適用できるとはいい切れません。

すでに下級裁判所判例では、買主Aが悪意を持って行ったとみなされる場合は、不法行為として認めるものもあります

二重譲渡が発生するケース

二重譲渡は、所有権を得ることのできない買主が、売主やほかの買主に対して所有権の主張や損害賠償請求をすることでトラブルに発展します。

ただし二重譲渡は、売主が故意に行うケースと知らずに行うケースがあります。さらに、買主が悪意を持って行うこともあります。それぞれ具体例を見てみましょう。

売主が故意に行うケース

売主が二重譲渡であることを認識して行うケースがあります。

たとえば、買主Aと売買契約を締結した後に、買主Bがさらに高値で買いたい意向を示したとします。すると、売主はより高い売却代金を得るために、買主Aとの間で売買契約解除をせずに、買主Bとも契約して引渡しをしてしまうことが考えられます。

本来は買主Bと契約する前に、買主Aとは契約を解除する必要があります。しかし、本当に買主Bが契約をするかどうか不安なため、契約解除前に買主Bと契約し引渡しまで進めてしまったものです。

この場合所有権は、移転登記した買主Bが権利を主張できます。所有権移転登記できなかった買主Aは、売主に対して契約解除と損害賠償請求を行います。

売主が知らずに行うケース

売主が知らずに二重譲渡をしてしまうこともあり得ます。

たとえば、親が不動産の売買契約を締結して、引渡す前に亡くなったとします。その売買契約の事実を知らない相続人が、別の買主に譲渡してしまうケースが考えられます。

売買契約から引渡しまでの期間が長いと、このような自体が発生するおそれがあります。さらに、不動産会社を仲介せず個人間取引をした場合などにも考えられます。

売主である相続人に落ち度はありませんが、結果的に売主責任を問われます。所有権移転登記をできなかった買主から、契約解除や違約金支払い請求、損害賠償請求を受けるおそれがあります。

買主が悪意を持って行うケース

昭和30年5月31日の判例では、ある買主が悪意を持って売主に二重譲渡を行わせ、先に売買契約を締結していた買主に損害を与えました。

この事案も相続が関係したもので、概要は以下のとおりです。

関係者 売主A、売主相続人B、第1買主X、第2買主Y
原告 第1買主X
被告 第2買主Y

参考:裁判所「最高裁判所判例集 昭和27(オ)1078

売主Aと第1買主Xとの間で売買契約が締結され、買主Xは売主Aに手付金を支払い、後日残金支払いと同時に引渡しを受ける約束となっていました。

しかし、引渡し前に売主Aが亡くなりました。第2買主Yは、買主Xがすでに売買契約を締結していたことを知っていました。それにも関わらず、売主相続人Bに売買を持ちかけ、契約し引渡しを受けました。

第1買主Xは買主Yに対して、買主Xの権利を不法に侵害したとして物件の時価から手付金を差し引いた金額を損害賠償として請求しました。1審と2審で、買主Xの訴えが認められました。

しかし第2買主Yは上告し、最高裁での審理の結果、買主Yには悪意があったとしても不法行為の責任を認めるには足らないとして、原判決を破棄し高等裁判所に差し戻したものです。

この判例は二重譲渡に関し第2買主に悪意があったとしても、不法行為とまではいえないとしたものです。二重譲渡に関する買主責任を判断する重要な判例です。

しかしこの判決後は、「背信的悪意者排除論」の考え方が法学会では通説となりました。背信的悪意者排除論とは、悪意を持った人が真の所有者の権利を害する目的で、登記の要件が足りていないことを主張することは認められないというものです。

実際、下級審では第2買主が悪意を持っている場合は、不法行為を認める判決もあります。

対抗要件が重要

不動産の権利を第三者に主張するためには、対抗要件を備えておく必要があります。対抗要件は、登記によって得ることができます。

二重譲渡の場合は、登記により対抗要件を得た買主が所有権を主張できます。

対抗要件とは

対抗要件とは、第三者に不動産の所有者としての権利を主張するために必要な要件のことです。

民法第177条では、次のように規定されています。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

e-Gov法令検索「民法」第百七十七条

つまり、不動産に関する権利は登記が必要ということです。

二重譲渡では同時に契約を行うことはないため、必ず先後があります。しかし契約の順番は権利の優劣に関係がなく、登記の有無が重要です。

売買契約の締結は、複数の買主と所有権を移転する約束です。しかし、権利を主張できるのは、移転した所有権の登記をしてからです。

二重譲渡と対抗要件

買主が悪意を持って二重譲渡を行い、一方の買主からの損害賠償請求が認められたとしても、所有権は登記した買主にあります。

登記した買主は、登記できなかった買主に損害賠償することで解決します。所有権は登記により対抗要件を得ているので、不法行為と指摘されても所有権に関する対抗要件は変わらないといえます。

二重譲渡は買主の一方に迷惑がかかります。二重譲渡になってしまうとわかったとき、あるいは二重譲渡になるおそれがあるときは、売主は速やかに契約済の売買契約を解除する必要があります。

放置しておくと、登記できなかった買主からの損害賠償請求は避けられないと理解しておきましょう。

不動産の売却は専門家に依頼する

二重譲渡は、特に相続物件を売却するときに、売主が知らないで行ってしまうおそれがあります。

相続ではない物件の売却の場合には、売主が知らずに二重譲渡をしてしまう可能性は低いですが、前述したように、別の買主からの働きかけがあるおそれがあります。

いずれにしても二重譲渡をした場合には、売主責任が問われます。そのようなトラブルを避けるには、不動産会社の仲介により売却することが最善です。

また仲介を依頼する不動産会社は、複数社を比較して信頼して不動産売却を任せられる会社を見つけることが重要です。

複数社を比較するためには、一括査定サイトの「リビンマッチ」を利用しましょう。リビンマッチでは一度の手間で複数の不動産会社から提案を受けられます。

不動産の二重譲渡に関するよくある質問

不動産の二重譲渡ってなに?
同じ不動産を複数の買主に譲渡することです。しかし物理的には不可能なため、トラブルに発展します。二重譲渡は、故意に発生することもありますが、売主が知らずに発生するケースもあります。
二重譲渡ではだれが不動産を取得できる?
登記により対抗要件を得た買主が、不動産の所有権を主張できます。契約の順番は権利の優劣に関係がなく、登記の有無が重要です。

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 リビンマッチ編集部

リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
誤字脱字や事実誤認などございましたら、ぜひともご指摘ください。

コンテンツの引用ルール

運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)

カテゴリー
不動産売却コラム
タグ

リビンマッチコラムを引用される際のルール

当サイトのコンテンツはどなたでも引用できます。 引用にあたって事前連絡などは不要です。 コンテンツを引用される際は、引用元が「リビンマッチ」であることを必ず明記してください。

引用ルールについて

カテゴリー一覧

Copyright © Living Technologies Inc. All rights reserved.
トップへ