負動産を相続したときの対処法!相続放棄は簡単にできない?
負担を強いられる不動産のことを「負動産」といいます。負動産は所有していても利益を生むことはありません。
そのような不動産を相続するくらいなら、相続放棄するのもひとつの方法です。
しかし、相続放棄にはデメリットがあり、そう簡単にはできません。ここでは、負動産でも相続放棄が難しい理由や、負動産を相続したときの対処法について紹介します。
もくじ
相続放棄は簡単ではない
相続放棄とは、財産の相続権を一切放棄することです。
相続放棄には、大きなデメリットが生じるおそれがあります。また、相続放棄をしたとしても、負動産から完全に解放されるとは限りません。
相続放棄する場合のデメリットと注意点を紹介します。
すべての財産を相続する権利を永久に失う
相続放棄をする場合、「不動産は放棄するけれど現金は相続する」といった選択はできません。相続放棄により、すべての財産を相続する権利を失います。
また、いったん相続放棄をすると撤回はできません。相続放棄後に新たな財産が見つかったとしても、それを相続する権利は一切ありません。
相続人が変わってしまう
同じ立場の法定相続人が全員、相続放棄をすると、相続人が次の順位に移ります。
たとえば、故人の妻と子どもが相続放棄をした場合、相続権は故人の親に移ります。親が負動産の存在を知らずに相続してしまうと、思わぬ負担を負うおそれがあります。
また、親戚間のトラブルに発展することもありますので、相続放棄をするときはその理由も含め、あらかじめ関係者に周知しておきましょう。
生命保険金や死亡退職金の非課税枠が利用できない
生命保険金や死亡退職金には、非課税枠が設定されています。しかし、相続放棄を行うと、その非課税枠が適用されません。
相続放棄をしても生命保険金や死亡退職金は受け取れますが、非課税枠が適用されないため、金額によっては多額の相続税が発生するおそれがあります。
物件の保存義務を負うケースがある
相続放棄のリスクに加えて注意しておきたいのが、相続放棄をしても不動産の保存義務が残る場合があるという点です。
民法では、相続放棄された財産の扱いについて、以下のように定められています。
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
つまり、相続放棄の時点で不動産を占有していた場合は、不動産の保存義務を負うということです。相続放棄を考えている場合、財産の占有は避けたほうがよいでしょう。
負動産を持ち続けるリスク
負動産を相続または管理することになった場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
経費がかかって損失が膨らむ
価値を生み出さない負動産でも、所有しているだけで固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。
さらに空き家として放置していると、管理状態が不十分と見なされ、特定空き家に認定されてしまいます。特定空き家に認定されると、固定資産税の軽減措置が受けられず、大きな負担となってしまいます。
それに加え、区分マンションであれば管理費や修繕積立費、一戸建てであれば除草や外壁塗装、屋根瓦の葺き替えなどの費用がかかります。
このように負動産は、利益を生まないだけでなく、経費もかさんでいきます。
相続人同士のトラブルになる
相続人が複数いる場合、不動産を共同で所有することになります。
上述したとおり、不動産の管理には費用や時間がかかるため、誰がお金を出すか、誰が管理責任を負うかなどでもめることがあります。
また、相続人の一人が売却に応じない、購入者が現れても売値に納得しないなど、不動産の処分に関して意見が割れることもあります。
その結果、親戚間でのトラブルに発展するおそれがあります。
近隣住民とトラブルになる
すでに紹介したとおり、利益の出ない負動産であっても家の管理は必要です。放置していると、次のようなトラブルが起こるおそれがあります。
- ゴミ屋敷を放置して虫が沸いた
- 木が伸びて電線を切ってしまった
- 台風で瓦が飛び、隣家のガラスを割ってしまった
このようなトラブルにより、近隣住民からクレームが出るほか、訴訟を起こされることも考えられます。
相続した負動産の処分方法
利益を生まない負動産は、所有していると損失が膨らむため、早急に処分したいところです。負動産を処分する方法について紹介します。
寄付(譲渡)する
土地の購入希望者が現れないときは、寄付(譲渡)するのもひとつの方法です。主な寄付先と注意点について解説します。
個人
基本的に、不動産の譲渡先に制限はありません。
利益の出ない不動産をほしがる人はあまりいないかもしれませんが、近隣の住民であれば、「更地にして自宅用の駐車場にしたい」「リフォームして子ども夫婦を住まわせたい」などの理由からほしいと思うかもしれません。
ただし、個人に寄付をする場合は、相手に贈与税がかかります。事前に説明をしていないとトラブルになるおそれがありますので注意が必要です。
自治体
市町村などの自治体に不動産を寄付することも可能です。
ただし、何でも引き取ってくれるわけではありません。自治体としても、メリットのない不動産は必要ありませんし、重要な税収となる固定資産税が減ってしまうためです。
そのため、寄付を申し出ても断られてしまうことがあります。
また、自治体に寄付する場合は、所定の手続きが必要です。自治体によって手続きが違いますので、早めに確認しておきましょう。
法人
社会福祉法人やNPO法人などの各種法人も寄付先の候補になりえます。
法人であれば不動産に関わる費用を経費に算入できるため、個人と比較すると不動産所有のハードルは低いといえます。
しかし、個人と同じく寄付を受けた側には贈与税がかかります。
すでに紹介したとおり、寄付(譲渡)は不可能ではありませんが、結果的に売却よりも手間や時間がかかったり、人間関係のトラブルに発展したりするおそれがあります。
売却する
負動産を相続した場合は、速やかに売却するのがおすすめです。
そのまま所有していると固定資産税などの経費がかかるだけではなく、地価や資産価値の低下により、ますます売りづらくなるおそれがあるためです。
一般的に不動産を売却する際は、不動産仲介会社を通じて購入希望者を探します。そのため、売却活動を始めてから実際に売却が完了するまでに、早くても数カ月、長いと数年かかることもあります。
資産価値の低い負動産であれば、なおのこと時間がかかるおそれがあります。
そこでおすすめするのが、一括査定サイトの利用です。一度の手続きで複数の会社に査定をしてもらえるため、売却活動がスムーズに進みます。
利益の出ない負動産を相続してしまい、できるだけ早く売却したい場合は、一括査定サイトを利用してはいかがでしょうか。手放したい負動産を売却してくれる不動産会社がきっとみつかるでしょう。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
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