三為業者の見分け方!不動産売買におけるリスクやメリットを解説
三為業者とは、第三者のために不動産契約を行う不動産業者のことを指し、三為屋とも呼ばれます。「三為」の読み方は「さんため」で、「第三者のため」という意味です。いわゆる不動産の転売屋のことです。
不動産売買において三為業者を利用すると、経済的損失が発生するリスクもあります。反対にメリットもあるため、よく比較することが重要です。
不動産業者が三為業者であるかを見分ける方法はあるのでしょうか。
本記事では三為業者の見分け方や、なぜ三為業者が危険といわれているのかを解説します。不動産の売却で損をしないために、しっかりと理解しておきましょう。
もくじ
三為業者とは?
三為業者について理解するためには、第三者契約や中間省略登記について知っておく必要があります。
第三者契約とは
通常の不動産の売買契約は、売主と買主で行われます。
一方、第三者契約では、売主と三為業者がまず売買契約を結び、次に三為業者と買主が売買契約を結びます。
宅地建物取引業法では、他人の所有する物件の売買契約を禁止しています。しかし、第三者のための売買契約を締結している場合は例外です。
第三者契約では、売主と買主が直接契約を結ぶことはないため、それぞれの取引価格は公開されません。
中間省略登記とは
通常の不動産売買では、売買契約後にその都度売主から買主に所有権移転登記を行います。
中間省略登記とは、AさんからBさん、BさんからCさんと不動産が売却された時、Bさんへの所有権移転登記を省略し、そのままCさんに移転する方法です。
中間省略登記を行うと、通常2回ある所有権移転登記が1回に省略されるため、登記簿上ではAさんからCさんへ名義が移転されます。
不動産の所有権移転には不動産評価額の2%の登録免許税がかかります。また、不動産を取得すると、不動産評価額の3%の不動産取得税がかかります。
たとえば評価額が3,000万円のマンションの場合、第三者契約によって三為業者が支払う税金は以下のとおりです。
通常であれば2回分の300万円かかるところが、150万円にできるということです。三為業者が行う第三者契約では、主にこのような節税を目的として中間省略登記が行われていました。
最高裁判所の判決では、三者が合意していれば問題ないとなっていますが、法務局の見解としてはこれを認めていません。
2005年に改正された不動産登記法では、登記申請の際には契約書の写しを添付することが必須になり、実質的に中間省略登記は禁止になりました。
新・中間省略登記とは
中間省略登記が禁止されたことにより、最高裁判所が認める三者が合意している第三者契約の登記方法として、合法的に新・中間省略登記が行われるようになりました。
新・中間省略登記には、以下の2種類の方法があります。
- 第三者のための契約であることを明らかにして契約する
- 売買契約後に買主としての地位を譲渡する
たとえば、売主が建物を解体したり土地を測量したりする資金を持っていない場合、三為業者が不動産を買い取り、解体や測量をしたうえで転売するというケースです。
ただし、第三者契約の最大の問題点である、売主の売却価格は買主に公開されないという問題が解決されたわけではありません。
三為業者は危険なのか?
三為業者による第三者契約は、さまざまな問題点が指摘されています。ここでは、なぜ三為業者が危険と思われているのかを解説します。
三為契約を利用するにしても、あらかじめそのメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。
売主と買主に発生する経済的損失
第三者契約では、売主から三為業者への売却価格が買主に公表されることはありません。
たとえば、売主が3,000万円で三為業者に売却し、買主が3,500万円で三為業者から購入した場合、差額の500万円は三為業者の利益です。
三為業者の存在がなければ、売主と買主は3,250万円で売買契約を結ぶことができたかもしれません。つまり売主にとってはより高く売れて、買主にとってはより安く購入できる可能性があったということです。
三為業者は、契約の書類のやり取りだけで500万円の利益を得ることになります。
このように、第三者契約では一般個人の売主と買主に、経済的損失が発生してしまう点が問題視されています。
不動産取引相場が不透明になる
三為業者が第三者契約を行うことによって、買主は売主の売却価格を、売主は買主の購入価格を知ることはできません。
不動産を売りたい時は、不動産業者に査定を依頼しますが、不動産業者は近隣物件の成約価格を元にして査定額を算出します。
三為業者による第三者契約が横行すると、同時期に売主の売却価格と買主の購入価格の2種類の価格が存在することになります。そのため、不動産の取引相場が不透明になるという問題点があります。
トラブルに発展しやすい
三為業者が短期間で利益を得るために、買主に契約を買い急がせたり、相場を調べる時間に余裕を持たせないということがあります。
そうしたトラブルが裁判になることもあるため、売主も三為業者に売却したことによってトラブルに巻き込まれてしまうリスクもあります。
三為業者を利用するメリットもある
デメリットや問題点の多い三為契約ですが、売主にとって利用するメリットはあるのでしょうか。
仲介手数料がかからない
三為業者を利用するメリットのひとつに、仲介手数料がかからないということがあります。
三為業者は、売主から直接不動産を買い取って転売することで利益を得ます。そのため、売主は仲介手数料を負担する必要がありません。
契約不適合責任を負わなくてよい
契約不適合責任とは、建物の不具合について売主が買主に負う責任のことです。不動産の引き渡し後に建物の不具合が発生した場合、買主は一定期間、売主に対して補修や減額を請求する権利があります。
売却代金の使い道が決まっている場合、そのような責任は売主にとって大きな負担です。
第三者契約では、契約不適合責任を問われるのは、買主と売買契約を交わす三為業者です。売主は、あらかじめその責任を放棄することが可能です。
金融機関で融資付けされている場合がある
不動産を買う人の多くは住宅ローンを利用します。そのため、住宅ローンが使いにくい不動産は売れにくくなります。
建物の築年数が経過している場合、金融機関の担保評価が低くなります。この場合、住宅ローンが使いにくく、なかなか買主が見つからないというリスクがあります。
三為業者は宅地建物取引業者のため、買主に対して2年間建物の保証などを提供できます。金融機関の担保評価がつきやすくなり、買主が見つかりやすくなります。
三為業者の見分け方
三為業者による第三者契約には、一部メリットもあるもののやはり問題点も多いため、避けたいという方も多いでしょう。
ここでは、三為業者を見分けるポイントをいくつかご紹介します。
登記簿の情報との差異
買主が三為業者かどうかを見分ける簡単な方法は、対象物件の登記簿謄本を確認することです。
三為業者は新・中間省略登記を行うため、登記簿謄本上の所有者は買主が契約する時の売主業者と違います。
つまり、売主業者の名前が登記簿謄本上の所有者の欄に書かれていなければ、三為業者の可能性が高いです。
「仲介手数料無料」の業者
三為業者の場合、売主と買主ともに仲介手数料が不要です。そのため、広告などで「仲介手数料無料!」とうたっていることが多くあります。
仲介手数料などの諸費用は一般的に現金で用意するため、手持ち資金が少ない場合には一定のメリットはあります。
しかし、実際には三為業者が仲介手数料分以上の利益をとっているケースが多いです。不当に安く買いたたかれたり、不当に高い物件を購入する可能性もあります。
実際に売却や購入する物件の価格と、周辺の取引相場をしっかりと比較して判断することが重要です。
買い急がせる・売り急がせる業者
三為業者に限らず、悪徳業者の共通点として「買い急がせる」「売り急がせる」ということがあります。
その目的は、顧客に相場を調べるための時間的な余裕を与えないということにあります。
顧客が周辺相場を理解していなければ、相場より安く買いたたき、相場より高く売りつけることが可能です。そのため、「ほかに検討している顧客がいる」などと言って、顧客に判断を急がせることがあります。
売主に対しては、買取価格を掲示した日に「今日中に契約してくれれば、この金額より◯◯万円高く買い取ります」といった、合理的に説明しにくい特別待遇を示唆するような場合には注意が必要でしょう。
あらかじめ周辺の売買相場を調べておいたり、複数の業者に査定を依頼することで、不当に安く買いたたかれることを防ぐことができます。
一括査定サイトを利用して相場を把握する
不動産売却には、不動産仲介で売却する方法と、不動産業者に直接買い取ってもらう方法があります。
不動産買取では不動産業者が直接買い取るため、相場の約7割の売却価格にはなりますが、早く現金化できます。
そのため、時間的な余裕がない場合や、建物の解体費や測量費を工面できない場合などに、三為業者による不動産買取を選択するというケースもあるでしょう。
不動産買取で売却する場合でも、自分で周辺の売却相場を把握しておくことはとても大切です。
まずは、不動産仲介で売却すればいくらくらいで売れるのかということがあらかじめ分かっていれば、不当に安く買いたたかれることを避けることができます。
一括査定サイトの「リビンマッチ」を利用すれば、対象物件の情報を入力するだけで複数の業者に一度に査定依頼が可能です。売却を考え始めた方は、相場を把握するためにも利用しましょう。
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