ペアローンを組んだのに離婚してしまった!一本化する以外の選択肢はある?
不動産価格の高騰や共働き世帯の増加を背景に、マイホームを購入する選択肢として注目されているのが「ペアローン」です。
ペアローンは、1つの不動産に対して2人がそれぞれ住宅ローンを契約する仕組みで、不動産と住宅ローンは共有名義となります。単独名義の住宅ローンと比べて借入額を増やしやすいため、より広い選択肢で住宅を購入できるのが特徴です。
ただし、ペアローンで購入したマイホームは、離婚後も共有名義が続くため、返済義務は解消されません。連帯保証人の関係もそのままなので、相手の返済が滞った場合には、その分の支払い義務を負うことになります。
このような状況から、不動産の財産分与や住宅ローンの返済方法について深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。
そこで今回は、ペアローンを組んでいる場合の離婚時の具体的な問題点や、その対処法について詳しく解説していきます。
もくじ
ペアローンを組んでいると離婚する時に大変?
ペアローンを組んでいるとどういったリスクが発生するのでしょうか。基本的な仕組みから確認してみましょう。
名義人がお互いの連帯保証人を務める
ペアローンとは、ひとつの不動産に対して夫婦がそれぞれ住宅ローンを組み、お互いが連帯保証人になるという形の住宅ローンです。
夫婦の両方に安定した収入がある場合、2人分の収入を元に審査するほうが借入可能額は増えます。その分予算も増やすことができるため、価格で諦めていた物件にも手が届く可能性が高まります。
また、夫婦がそれぞれ住宅ローン控除を受けられるという税制上のメリットがあります。
住宅ローン控除は2022年に改正され、還付期間が延長された代わりに還付割合が減少しました。そのため、1人よりも2人で住宅ローン控除の適用を受けるほうが、税制優遇の恩恵が大きくなります。
ペアローンにはメリットが多くありますが、万が一離婚する際には後ほど紹介するようなリスクもあるので注意が必要です。
離婚時に自宅の扱いに困る
ペアローンを組むリスクのひとつが、離婚時の自宅の扱いです。
ペアローンを組む場合、対象不動産の所有権は夫婦の共有名義です。そのため、離婚の際に売却するか保有し続けるかどうかで、合意形成が困難になることがあります。
こちらについては、後ほど詳しく解説します。
支払い義務をひとりが負うリスクがある
ペアローンを組む時は、所有権を共有名義にするため、お互いが住宅ローンの連帯保証人であることに注意が必要です。
ペアローンは単独ローンよりも借入可能額を増やせるというメリットがありますが、その特徴から、どちらかひとりでは支払えないというケースが大半です。
離婚に伴って相手方が支払いを拒否した時には、連帯保証人として支払い義務を負います。
返済が滞ってしまうと、金融機関が持つ債権は保証会社に移り、一括返済が求められます。
参考:ペアローンを後悔するのはどんな時?知っておきたいリスクと対処法 | 不動産投資の教科書
ペアローンを組んで離婚した場合、自宅はどうする?
離婚する場合、以下の2つのケースがあります。
- 夫婦の両方が転居する
- どちらかが住み続ける
ペアローンを組んでいる場合、自宅の扱いにはどのような選択肢があるのでしょうか。
名義と住宅ローンを一本化する
ペアローンを組んで不動産を購入する場合、所有権は夫と妻の共有名義になっています。ただし、住宅ローン契約は夫と妻の2つ分あります。
たとえば、夫が住み続けて妻が転居するという場合、妻の共有持分と住宅ローンを夫名義に一本化するケースがあります。
ただしこの場合、ひとりで夫婦2人分の住宅ローンを支払えるだけの与信があることが前提です。与信とは、銀行がお金を貸せるだけの信用力のことです。
具体的には、物件の担保評価とともに改めて住宅ローン審査をして、住宅ローンを借り換えます。この審査に通らなければ一本化できません。
共有名義のまま夫婦のいずれかが住み続ける
夫婦のいずれかが住み続ける場合でも、名義や住宅ローンを一本化せず、共有名義のままにしておくことも可能です。
たとえば、子どもの教育環境を変えたくないという場合、親権を持つ人と子どもが自宅に住み続け、もう一方がその後も住宅ローンの支払いを続けるという形です。
この場合、住宅ローンの支払いも養育費に充当できると考えられるため、学童期の子どもがいる夫婦の離婚などではよくあるケースです。
ただし、ペアローンは夫婦がお互いに連帯保証人になっています。そのため、片方の返済が滞った時には、もう一方に2人分のローンの支払い義務が発生してしまいます。
また、ペアローンを組むためには、名義人である両方が住むことが契約条件の場合があります。そのため、共有名義のままだと契約違反とみなされるリスクがあることには注意しましょう。
法律相談ナビでは、離婚後も家に住み続ける方法について解説しています。離婚してからの住まいについてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
共有名義のまま賃貸に出す
夫婦の両方が転居するものの、事情により自宅を手放したくない場合、賃貸に出すという選択肢があります。
また、以下のようなケースでも有効です。
- 自宅の価値が値下がりしてしまい、売却価格では残債を完済できない
- 値上がり傾向にあり今売ってしまうのはもったいない
ただし、住宅ローン金利のまま借り続けられるかどうかは金融機関に相談し、同意を得る必要があります。
金融機関によっては、事業用ローンに借り換えが必要なこともあるため、注意しましょう。
また、不動産を共有していると税金の支払いや管理・修繕などについて協議が必要になることがあります。離婚した相手とはなるべく顔を合わせたくないという場合にはおすすめできません。
売却する
結婚してから購入した不動産は、夫婦の共有財産となり、離婚時の財産分与の対象です。
離婚成立と同時に財産分与をすっきり済ませておきたいという方も多いでしょう。
その場合は、不動産を売却して現金化し、持分割合に合わせて財産分与する換価分割が最もスムーズな方法です。
自宅を売却する際の注意点
ペアローンを組んでいる場合は所有権も共有名義になっているため、売却する際には注意が必要です。
共有名義の不動産売却
ペアローンで購入した自宅は、夫婦の共有名義です。
売却理由が離婚であるかどうかに関わらず、共有名義の不動産を売却する際は、所有者全員の同意が必要であるという点に注意が必要です。
売却するかどうかということだけではなく、以下のような契約の諸条件についても、所有者全員の同意を得ておきましょう。
- 売却価格
- 引き渡し日
- ローン特約や買い替え特約
共有物分割請求訴訟
共有名義の不動産の売却は所有者全員の同意が必要ですが、誰かが売却を拒否し続ければ手放さずに済むのかというと、そうではありません。
共有名義の不動産は管理が適切に行われなかったり、納税義務者が曖昧になるなどトラブルが増える傾向にあります。国としては、できるだけ共有状態を解消するほうが望ましいという立場を取っています。
そのため、共有者には共有物分割請求権が認められています。共有者のいずれかが共有物分割請求をした場合、協議の上で売却して現金化してから分割します。
協議が不調に終わった場合は、裁判で換価分割が命じられ、競売によって現金化することになります。競売の落札価格は市場価格の約7割とかなり安くなってしまうため、必要以上に損失が大きくなってしまうリスクがあります。
つまり、共有名義で購入した不動産を夫婦のいずれかが売却したいと申し出た場合、その意思は無視できません。
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、住宅ローンの残高が不動産の売却価格を上回っている状態のことを指します。それに対して、ローン残高よりも売却価格を下回っている状態のことをアンダーローンといいます。
アンダーローンの場合は、売却益で住宅ローンを完済できます。
しかし、オーバーローンの場合は差額を用意しなければ抵当権が抹消できません。不動産を担保とする抵当権が設定されたままでは、スムーズに手放すことが難しいです。
この場合、現金でローン残高と売却価格の差額を用意し、住宅ローンを完済するという方法があります。手持ち資金に余裕がある場合は、この選択肢が現実的です。
手持ち資金がない場合は、任意売却で不動産を売却し、差額のローンを転居後も返済し続けるという方法があります。
金融機関との合意が必要ですが、相場で売却できるため、競売で手放すよりも高く売ることができます。
売却後は、残りのローンを支払い続けることになりますが、転居後の住居費と二重払いになることも考慮して資金計画を立てる必要があります。
少しでも高く売るためには
離婚に伴い自宅を売却する場合は、アンダーローンかオーバーローンかによって方法が変わる可能性があります。
そのため、なるべく早く自宅の売れる価格を把握することが大切です。
少しでも高く売却するためには、なるべく多くの不動産会社の意見を聞き、適切な販売戦略を練ることが大切です。
まずは一括査定サイトの「リビンマッチ」を通じて、複数の不動産会社に査定依頼をしましょう。
早ければ2〜3日、遅くとも1週間以内には簡易査定の結果が送られてくるため、その結果を考慮しながら、今後の選択肢を検討しましょう。
離婚問題を解決する情報については、こちらのサイトで詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:法ナビ離婚|離婚問題の悩みや不安を減らすための確かな情報をお届けします
離婚時のぺアローンに関するよくある質問
- ぺアローンを組むと離婚時にどういうリスクがある?
- お互いが住宅ローンの連帯保証人のため、どちらかが支払いを拒否した時にひとりで支払い義務を負うリスクがあります。また、売却するか保有し続けるかどうかで合意形成が困難なケースがあります。
- 離婚時のぺアローンの一本化とは?
- ぺアローンを組んで不動産を購入する場合、所有権は夫と妻の共有名義ですが、住宅ローン契約は2人分あります。そのため、どちらかの名義のみにすることが原則必要です。
関連記事
- 不動産売却
- 持ち家を抱えた夫婦が離婚するときに直面する課題と対策
- 連帯債務型の住宅ローンは離婚時に抜けられる?リスクと解決策を紹介
- 住宅ローンの連帯保証人のまま離婚するとどうなる?リスクや対処法を徹底解説
- 離婚したら住宅ローンや家の名義は変更できる?変更する方法や必要な費用・変更しないリスクなど解説
- 離婚したら住宅ローン支払い義務はどうなるの?起こり得るリスクや対策など分かりやすく解説
- 離婚時に残っている住宅ローンは折半?どうすればよいのか検討するポイントや対処法を解説
- 離婚時に住宅ローンと養育費は相殺・減額できる?注意すべきトラブルも紹介
- 離婚後も住宅ローン控除を受けられるケース・受けられないケースを解説
- 離婚で住宅ローンが払えない!事例や対策を紹介します
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
誤字脱字や事実誤認などございましたら、ぜひともご指摘ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
人気ワード
離婚で家を財産分与 (27) 老後の住まい (24) 売れないマンション (16) 一括査定サイト (15) 離婚と住宅ローン (13) 海外移住 (11) 訳あり物件 (11) 家の売却 (11) 家の後悔 (10) 不動産高く売る (9) 実家売却 (9) マンション価格推移 (8) マンションの相続 (8) 移住 (7) アパート売却 (7) 不動産会社の選び方 (6) マンション売却の内覧 (6) 家の価値 (6) 離婚と家 (6) 売れない家 (5) お金がない (5) 空き家売却 (5) 離婚準備 (5) 離婚と家売却 (5) 農地売却 (4) 近隣トラブル (4) マンション買取 (4) 家の解体費用 (4) 売れない土地 (3) マンションか戸建てか (3) サブリース (3) イエウール (3) 不動産価格推移 (3) リビンマッチ評判 (2) シンガポール移住 (2)リビンマッチコラムを引用される際のルール
当サイトのコンテンツはどなたでも引用できます。 引用にあたって事前連絡などは不要です。 コンテンツを引用される際は、引用元が「リビンマッチ」であることを必ず明記してください。
引用ルールについて