農地の売却でかかる税金一覧!確定申告をして特別控除を受けよう
農地の売却には、通常の不動産売却と同じように、税金がかかります。また、それ以外にも農地転用や測量代などの費用がかかる場合もあります。
農地の売却で具体的にどういった税金や費用がかかるかを紹介します。
また、要件を満たせば、確定申告をして特別控除を利用できるケースもあります。上手に活用して、支出を抑えましょう。
もくじ
農地の売却にかかる税金
農地を売却した場合に課税される税金の種類と税率について解説します。
譲渡所得税
農地であっても宅地であっても、不動産の売却により課税される譲渡所得税の仕組みや計算方法は同じです。利益である譲渡所得に対してかかります。
譲渡所得がある場合は売却した翌年の2月16日〜3月15日の期間に税務署に確定申告をして、税額の申請と納税をします。
譲渡所得は次の計算式により求めます。
取得費とは、売却する農地を取得したときの代金や取得のために支出した費用の合計です。相続した農地の場合は、被相続人が取得した時の費用です。
いくらで手に入れたのか分からない場合は、譲渡した価額の5%で計算します。
譲渡所得がプラスではない場合は確定申告の必要はありません。ただし、マイナスの場合でも確定申告をすることで税金の控除が受けられる場合もあるため、できるだけしておきましょう。
なお、譲渡所得税は以下の3つで構成されています。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
ここではそれぞれ分けて紹介します。
所得税
所有期間によって、それぞれ以下のように税率が定められています。
- 短期譲渡
- 所有期間が5年以下の場合、譲渡所得に対して30%の税率
- 長期譲渡
- 所有期間が5年超の場合、譲渡所得に対して短期の2分の1である15%の税率
復興特別所得税
東日本大震災からの復興に必要な財源確保が目的の、特別な所得税です。2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間継続される制度であり、所得税率の2.1%を所得税率に加算します。
所得税は復興特別所得税を加算すると、次の税率になります。
- 短期譲渡
- 所有期間が5年以下の場合、譲渡所得税の30%に2.1%をかけた0.63%が税率
- 長期譲渡
- 所有期間が5年超の場合、譲渡所得税の15%に2.1%をかけた0.315%が税率
所得税と合計して、短期譲渡の場合は30.63%、長期譲渡の場合は15.315%が所得税になります。
住民税
譲渡所得に対して住民税が課税されます。住民税も短期譲渡と長期譲渡で税率が異なり、それぞれ次のようになります。
- 短期譲渡
- 所有期間が5年以下の場合、譲渡所得に対して9%の税率
- 長期譲渡
- 所有期間が5年超の場合、譲渡所得に対して5%の税率
所得税は国税なので税務署、住民税は都道府県および市区町村の管轄です。
印紙税
農地の売買契約を書面で契約する場合は、印紙税が課税されます。
契約書1通に対してかかるため、売主と買主それぞれが1通ずつ契約書を作成する場合は2通分です。契約書を1通作成する場合であっても、売主と買主がそれぞれ折半して負担するのが一般的です。
不動産の譲渡に関する印紙税は、譲渡金額により印紙税が定められています。現在軽減措置がなされており、たとえば1,000万円超〜5,000万円の売買金額であれば印紙税は、契約書1通に対して1万円です。
詳しくは国税庁の「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」で確認してみましょう。
登録免許税
農地を取得した時から引っ越しなどにより住所を変更した場合であっても、登記上で所有者の住所変更をしていないケースは多いです。その場合、売主の現住所と登記上の住所が違います。
不動産を売却すると買主に所有権の移転登記を行いますが、売主は登記上の住所と一致する印鑑証明書が必要です。そのため、現住所と登記上の住所が異なる場合は住所の変更登記をしましょう。
住所変更登記には登録免許税の支払いが必要です。登録免許税は不動産1筆につき1,000円かかります。
また、売却する農地に、農地を担保とする抵当権が設定されている場合には、抵当権抹消登記も必要です。抵当権抹消に関する登録免許税は、不動産1筆につき1,000円です。
農地売却にかかる税金以外の費用
税金以外にも、農地の売却に必要となる費用があります。事前に不動産会社から見積もりをもらい、資金計画を立てたうえで進めることが重要です。
仲介手数料
農地の売買には2種類あります。
宅地建物取引業法では、都市計画により用途地域内にある土地を宅地と定義しています。農地であっても用途地域内の土地であれば、不動産会社が仲介する場合は宅地建物取引業法が適用されます。
用途地域外の土地である農地で、建物を建てる用途に使わず農地として使用する場合は、宅地に該当しません。その場合、不動産会社が仲介する場合であっても宅地建物取引業法は適用されません。
つまり不動産会社が農地の売買を仲介する場合、法律上の制限を受けるケースと受けないケースがあります。
法律上の制限を受けるケース、つまり農地であっても宅地に該当する場合は、宅地建物取引業法が定める金額を上限として仲介手数料を支払います。
この場合の仲介手数料の計算は以下のようにします。
農地の売買代金 | 計算方法(消費税別) |
---|---|
200万円以下 | 売買金額の5% |
200万円超~400万円以下 | 売買金額の4%+2万円 |
400万円超 | 売買金額の3%+6万円 |
ただし、400万円以下の物件であっても、空き家などで取引にあたり物件の調査を必要とする場合は注意が必要です。売主が不動産会社に支払う仲介手数料の上限を18万円にできるように改正されています。
宅地に該当しない場合は法律上の制約がないため、農地の売買に関する仲介手数料は売主と不動産会社との協議により決まります。
測量代
農地は、土地の境界が不明確であり正確な面積が分からないというケースが多いです。
買主によっては、測量により正確な面積や境界を明確にしてほしいとの要望をされる場合もあります。また、1筆の農地を分筆して売却する場合は、境界を確定するための測量が必要です。
測量代はケースバイケースですので、必要な場合はまず測量士や土地家屋調査士に相談し、事前に費用の目安を把握しておくことが大切です。
農地転用やその他の手続き
農地を農地以外の目的で使用するためには、農地転用の手続きが必要です。
農地転用手続きは買主が使用する目的で購入するので、買主が負担するのが一般的です。しかしなかには、売主が負担するケースもあります。
手続きには許可申請書だけでなく、多くの添付書類が必要です。そのため、行政書士に依頼するほうが時間もかからず間違いがありません。
費用は約3万~10万円かかります。
また、前述したように売主の住所変更登記や抵当権抹消登記が必要な場合、司法書士に依頼すると司法書士の業務報酬としてそれぞれ約1万~2万円の費用が必要です。
特別控除を利用して節税する
農地のなかでも農用地区域として指定された土地を譲渡し、譲渡益が発生する場合は所得税や法人税がかかります。
しかし農業委員会のあっせんなどによって、農地拡大を希望する人などに売却した場合は、譲渡金額から特別控除できる3つの特例があります。
800万円控除
次の要件のいずれかに該当する場合、農地譲渡に関して800万円の特別控除ができます。
- 規模を縮小する農家が「市町村長との協議」または「都道府県知事からの調停」または「農業委員会のあっせん」により、意欲のある農業者に譲渡する場合
- 規模を縮小する農家が「農地中間管理機構」に譲渡し、そののち意欲のある農業者に売り渡すか、一時貸付後に売り渡す場合
- 規模を縮小する農家が、市町村が作成・公告した農用地利用集積計画にもとづき意欲のある農業者に譲渡する場合
1,500万円控除
規模を縮小する農家が次の手順で農地を譲渡した場合は、特別控除が1,500万円になります。
- 規模を縮小する農家が「農業委員会」に対し「あっせんを受けたい旨」の申出をおこなう
- 申出を受けた農業委員会は「市町村長」に対して「買入協議の通知」の要請をおこなう
- 市町村長は「農地中間管理機構」と「規模を縮小する農家」に対して買入協議の通知をおこなう
- 「規模を縮小する農家」は市町村長からの通知を受けたのち「農地中間管理機構」と協議し譲渡する
2,000万円控除とその他控除
特例農用地利用規程が作成され、その実施区域内の農地を「規模を縮小する農家」が「農地中間管理機構」に譲渡する場合には2,000万円の控除が受けられます。
また土地収用法などにより農地が買い取られる場合は、5,000万円控除が適用されます。
800万円控除、1,500万円控除、2,000万円控除、5,000万円控除のすべて、特別控除を受けるには確定申告が必要です。
農地売却は専門家に相談しよう
農地の売却は個人間で行うケースもありますが、農業委員会の許可や都道府県知事あるいは農林水産大臣の許可が必要な場合もあります。
さらに、市街化区域内の農地は届出ですむ場合と許可が必要な場合もあり、一般的な不動産に比べて売却の手順が複雑です。
農地を売却する場合は、農地売買に詳しい不動産会社に相談するのが、間違いがなくスムーズに売却を進められる近道です。
農地に詳しい不動産会社を探すには、不動産の一括査定サイト「リビンマッチ」を活用しましょう。リビンマッチでは、利用する際に土地の種類を選択できます。そのため、農地に絞って、簡単な物件情報を入力するだけで、農地売却が得意な複数社から提案を受けることができます。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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