不動産転売には税金がいくら必要?利益を出すポイントとは
不動産を利用して利益を出す方法のひとつである転売は難しいように感じる方も多いでしょう。
しかし、「仕入れて売る」という単純な仕組みのため、ある程度の知識は必要ですが、不動産業者だけでなく個人の投資家でも転売が可能です。
ただし、不動産の転売では高額な税金が発生する可能性があるため、売却しても利益が出ない場合もあります。
この記事では、不動産転売にかかる税金や利益を出すポイントについて分かりやすく解説します。
この記事の監修者
田島 美佳(タジマ ミカ)田島美佳税理士事務所
平成31年2月 税理士登録
令和2年1月 田島美佳税理士事務所 開業 (東京都中央区)
- 【活動実績】
- 不動産鑑定士実務修習講義、税務講師担当、ハウスメーカー主催、相続税セミナー講師、不動産会社主催、税制改正・民法改正セミナー講師、企業向け税金勉強会の開催・講師
- 【業務内容】
- 個人、法人に関する業務、企業のスタートアップ支援、会計、税務申告、財務分析、資産税に関する業務、生前対策、遺言書作成に関する税金面からのコンサルティング、相続税申告書作成
※社労士、司法書士、弁護士、測量士等、他士業との連携を行いスムーズな問題解決を行っております。
会社ホームページ:田島美佳税理士事務所
もくじ
不動産転売は儲かる?
不動産転売とは、不動産を購入して売却した金額の差額分で利益を出す方法のことをいいます。仕組みだけ見れば安く仕入れて高く売るという、普通の商売同様とても単純なものです。
しかし不動産は、価格が一定ではなく市場や需要によって変動します。実際に利益を出すことは難しいのでしょうか。
現在は利益を出しにくい
不動産の転売が儲かる商売として普及していたのは、1980年代のバブル期の頃です。
バブル景気の頃には、土地の値段が数週間で倍以上に跳ね上がるなど、土地の価格変動が異常にあり、投資の中でも人気がありました。
「土地転がし」という言葉があるほど、土地の転売を繰り返し利益を上げることが比較的しやすかったのです。
バブル期後半には、土地価格の急激な値上がりを利用した転売を規制するための土地基本法が制定されました。また、税金制度も改正され、購入後すぐに不動産を売却すると大きな税金が課せられるようになったのです。
そもそも、現在はバブル期ほどの大きな不動産価格の変動はあまりありません。
また建物については、税金を抑えるために長期で不動産を保有すると築年数が経過してしまい、購入時よりも高額で売却することも難しいです。
このような要因がネックとなり、現在では不動産転売で利益を出しにくい状況といえます。
転売は違法にはならない
不動産転売というと、違法なのではというイメージを持っている方も多いです。しかし、個人で不動産を転売して利益を得たとしても違法ではありません。
土地基本法では、土地取引において投機的な取引を禁止する旨が定められています。
しかし、投機的な取引=転売とはならないのです。
土地取引で利益が出たとしても、個人での取引の場合、それが偶然なのか転売目的なのかは判断が難しいです。そのため、実際に不動産を転売して利益を得たとしても違法とされることはほとんどありません。
ただし、短期間で転売を繰り返して利益を得ると転売目的とみなされ違法性を問われる可能性があるので注意しましょう。
不動産転売は税金が高い?
不動産転売で利益を出しにくい原因に、高い税金があります。
不動産売却時に譲渡所得税が課せられる
不動産転売では、通常の不動産売却と同様に譲渡所得税が課せられます。
不動産売却で出た利益は、譲渡所得として課税対象となり、所得税や住民税が課せられます。これらを譲渡所得税と呼びます。
譲渡所得税は、次の方法で求められます。
譲渡所得税=譲渡所得 × 税率
まず、課税対象となる譲渡所得を計算します。
譲渡所得は、大まかには「売却価格から取得にかかった費用と売却にかかった費用を差し引いた利益」です。
- 取得費
- 不動産の取得にかかった費用
- 譲渡費用
- 売却にかかった費用のことをいい、仲介手数料などが該当する
- 特別控除
- 売却する不動産に合った控除を適用することが可能
取得費は、物件の購入価格だけでなく仲介料などの手数料も含みます。ただし、購入価格から減価償却費を差し引く必要があるので注意しましょう。
また、適用できる控除がないか事前に調べておくようにしましょう。
これらの費用を購入価格から差し引き譲渡所得を算出したら、税率を掛けることで譲渡所得税が分かります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
譲渡所得税を算出するための税率は、不動産の所有期間に応じて違います。
所有期間 | 所得税(%) | 住民税(%) | 税率合計(%) | |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63 | 9 | 39.63 |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315 | 5 | 20.315 |
不動産の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得の税率が適用されます。
たとえば、同じ2,000万円の売却利益が出た場合でも、所有期間によって次のように税額が違います。
長期譲渡所得:2,000万円 × 20.315%=406万3,000円
このように、倍近い額の税金の差が出てしまいます。
所有期間は5年を超えてから売却する
不動産転売では、短い期間で不動産を売却してしまうと高い税率が課せられ、利益の大半を税金に持っていかれてしまいます。利益を多く残すためには、所有期間5年超えがひとつの目安です。
ただし、所有期間を計算する基準日には注意が必要です。基準日は、売却した年の1月1日時点での所有期間です。
たとえば、2020年4月1日に購入した不動産を2025年6月1日に売却した場合、実際の所有期間は5年と2カ月で5年をを超えています。
しかし、売却した年2025年1月1日時点では5年を経過していないため、短期譲渡所得が適用されてしまいます。
転売で利益を出すためには、基準日の時点で5年経過しているかを確認することが重要です。
譲渡所得税以外にかかる費用
不動産売却では、譲渡所得税以外にも次のような税金や費用がかかります。
- 不動産会社への仲介手数料
- 印紙税
- 登記費用
- 司法書士への報酬
- ローン返済手数料
これらの費用は、売却代金の約10%かかるのが一般的です。不動産売却では、売却のための経費が高額になることも利益を出しにくい要因です。
売却にどれくらいの費用がかかるのかを把握したうえで売却計画を立てることが大切です。
不動産転売で成功するために
高額な税金を課せられる不動産転売で、利益を出すのは難しいです。
しかし、優良物件や売却のタイミングを見極めることで、購入時よりも高く売却することは可能です。
ここでは、不動産転売で成功するためのポイントを紹介します。
情報収集
転売のための不動産や転売時期の見極めには、情報収集が欠かせません。転売向きの不動産は一般的なポータルサイトだけでは情報が少ない場合もあります。
ネットに掲載されていない物件を探すには、知人などのつてを頼りにすることや現地を自分の足で回ることも重要です。
また、本格的にするのであれば不動産会社を起業するのもひとつの手です。
起業すれば、不動産業者専用サイトであるレインズの閲覧が可能になり、全国の不動産情報を調べられます。
情報を収集するうえでは、不動産の今の状態だけでなく将来の資産価値を見極める情報が重要です。
特に、周辺地域の発展性は資産価値に大きく影響するので必ず調べるようにしましょう。
さらに、次のような情報も転売するうえでは重要です。
- 不動産価格の推移
- 今後不動産価値に影響のあるイベントなどの情報
不動産価格の推移については下記コラムを参考にしてみてください
付加価値をつける
安い不動産を購入して、リフォームやリノベーションで手を加えて転売するのもひとつの手段です。地方や郊外では、庭付き戸建てでも安く販売されている物件は多くあります。
築何数が古くてもリノベーションすることで利益を得られる可能性があるでしょう。
ただし、リフォームなどの費用が高額になりすぎると転売しても損失が出てしまうおそれがあるので、注意しましょう。
所有期間中は運用で収益を出す
所有期間5年以下で売却すると税金が高額になるため、5年以上は所有しておくほうが利益を得やすいです。しかし、5年間何もせずに保有していても、固定資産税や修繕費用などの経費だけがかかってしまいます。
何もせずに保有するよりも、運用しながら売却まで保有することで、節税とともに収益を得られます。賃貸として貸し出す、駐車場にするなどで運用することも検討しましょう。
ただし、賃貸などでは売りたいタイミングで売却できなくなる場合があるので注意が必要です。賃貸契約の期間など、売却タイミングに合わせて適切に設定しましょう。
売却時は一括査定サイトを利用する
不動産の売却査定は、査定額が不動産会社によって異なるため、一社のみではなく複数社に依頼しましょう。
一社のみでは、価格の妥当性などを判断できない場合があります。複数の会社に依頼することで、おおよその相場も把握できます。
査定をしてくれる業者の中には買取業務も行っている会社も多いです。仲介に出した場合と買い取ってもらう場合で比較するのもよいでしょう。
売却時には焦らず、複数の業者を比較しながら満足のいく売却活動を進めていきましょう。
監修者からのコメント
不動産転売で発生する税金は、売却益に対する「譲渡所得税」です。これは「所得税」「住民税」「復興特別所得税」を含み、長期保有(5年以上)と短期保有(5年未満)で税率が異なります。
短期保有の場合、最大約39%の税率が適用され、長期保有では約20%です。所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断されます。たとえば、2019年4月1日に取得した不動産を2024年5月に売却する場合、2024年1月1日時点で所有期間が5年未満のため、短期譲渡として扱われます。また、利益を出すポイントとして、物件の購入価格や諸費用を含めた総投資額を抑えること、そして市場動向をしっかりと分析して売却タイミングを見極めることが重要です。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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