不動産売却で譲渡損失が出ても確定申告した方がお得。必要書類は何がいる?
不動産売却に損失が出た場合、確定申告は義務ではありません。
しかし、一定の要件を満たしていれば、売却した翌年に確定申告をすることで、得をする場合があります。
ここでは、不動産売却で譲渡損失が出ても得する制度や確定申告時に必要な書類、手続き方法を紹介します。
もくじ
譲渡損失が出ても確定申告することでお得に
不動産売却で損した場合、譲渡所得にかかる税金がありませんので、通常であれば確定申告は不要です。
しかし、確定申告をすることにより、利用できる税法上の特例があります。
税法上の特例について詳しく見ていきます。
譲渡損失とは
譲渡損(譲渡損失)とは、不動産を売却したときに、譲渡所得がマイナスになる場合のことを言います。
譲渡所得は、以下のように求められます。
譲渡所得=売却金額-取得費-譲渡費用
譲渡所得がプラスの場合は、課税の対象となり確定申告が必要です。
マイナスの場合は課税する所得がないので、基本的に確定申告は必要ありません。
しかし、譲渡損失が出た場合でも、確定申告をすれば、特例を利用することで、税金が軽減される場合があります。
不動産売却で損をしても、税金の特例を利用したい人は、必ず確定申告をしましょう。
特例の利用
不動産売却で損をした場合、必要な条件を満たしていれば、売却した年のその他所得と相殺して、所得税や住民税を減らせます。
これを、「損益通算」と言います。
また、売却した年の所得よりも、譲渡損失のほうが大きく、相殺しきれない場合もあります。その場合、翌年以降の所得からも繰り越して差し引ける「繰越控除」を利用できるケースがあります。
繰越控除は、売却した年の翌年から最長3年間に渡り、繰り越して控除できます。つまり、売却した年と合わせて最長4年間の所得税や住民税を軽減できます。
この「損益通算」と「繰越控除」を利用できる特例には、次の2種類があります。
- マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
それぞれ解説していきます。
マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは
「マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、マイホームを買い替える際に、マイホームの売却で発生した譲渡損失に対する特例です。
特例を利用するための条件は、細かく設定されています。
簡単に下記表へまとめます。
条件 | |
---|---|
売却するマイホーム | ・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超であること ・敷地面積が500平方メートル以内までの譲渡損失の金額であること ・前年、前々年において、本特例の適用を受けていないこと |
買い替えるマイホーム |
・売却した年の前年1月1日から翌年12月31日までに購入し、居住または居住見込みであること ・建物の床面積が50平方メートル以上であること ・繰越控除を適用する年の12月31日または特例の適用を受けようとする年の12月31日において、住宅ローンの償還期間が10年以上あり、残高があること |
参考:国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
新しいマイホームの購入時は、住宅ローン控除との併用は可能です。
ただし、損益通算を行う各年の所得が3,000万円以上の年については、特例が対象外となるので注意が必要です。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、買い替えなくても、マイホームの売却で発生した譲渡損失に対する特例です。
買い替えの場合の特例と大きく異なるのは、以下のとおりです。
- 転居先の条件がない
- 売却の前日に、売却するマイホームの住宅ローンの償還期間が10年以上あり、残高があること
- 住宅ローン残高が売却金額を超えていること
参考:国税庁「「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「特定譲渡」とは」
この特例は、損益通算と繰越控除の対象となる譲渡損失が、「売却した前日の住宅ローン残高から売却価格を差し引いた金額」または「売却した譲渡損失額」のいずれかの損失が少ない方に適用されます。
また、この特例も、買い替えと同様に、各年の所得が3,000万円以上の年については、特例が対象外という条件がつきます。
必要書類
実際に確定申告する際の、必要書類を紹介します。
税務署から取り寄せる必要書類
税務署指定の書式があるものは、インターネット上でダウンロードするか、直接取りに行く必要があります。事前に確認しておきましょう。
譲渡所得の内訳書
譲渡所得の内訳書は、不動産の売却による譲渡所得の金額を計算するために使用するものです。該当の物件情報や売却価格などを記載します。
確定申告書B様式
確定申告書にはAとBの2種類があり、不動産所得を申請する場合は確定申告書Bを提出します。
分離課税用の申告書
不動産譲渡による所得は、給与など、他の所得とは合算してはいけません。
不動産所得を記入するための用紙が、分離課税用の申告書です。
自身で用意するもの
自身で用意するものを解説します。きちんと保管されているかどうか確認しておきましょう。
売買契約書
売買契約書はもちろん、仲介手数料や登記費用などの領収書も必要です。
売却した不動産の登記簿謄本
登記簿謄本によって、売買契約書には書かれていない権利情報など、より詳しい物件情報が分かります。
登記簿謄本はしっかりと保管しておきましょう。
確定申告の手続き方法
最後に、確定申告の手続きについて紹介します。
損をしないためにも、手続きの期間や方法など、押さえておきましょう。
時期
確定申告は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に行います。
申告期間を過ぎてしまうと、特例が適用されないので注意しましょう。
e-taxで電子申請が可能に
オンライン(e-Tax)での申請も可能です。
オンラインの案内に従って入力を進めて行けば、自動で計算や必要箇所へのリンクが行われます。
記入ミスや計算ミスを防ぐことができ、簡単に資料を作成できるのでおすすめです。
オンライン申請をする場合は、事前に、利用者識別番号(半角16桁の番号)が必要です。
利用者識別番号は、e-Taxのホームページにある「e-Tax の開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から開始届出書を作成し、送信すると、簡単に取得できます。
また、マイナンバーカードをお持ちの方であれば、マイナンバーカード方式のアカウントの登録を完了させると、マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書の暗証番号(数字4桁)を使ってログインが可能です。
一度登録すると、「マイナンバーカード方式の利用登録」も併せて格納されるので、次年度からの申請も可能となり、とても便利です。
専門家への相談も検討する
確定申告の手続きは、自分でも行うことができます。しかし、難しい税の知識や特例の適用条件、確定申告に必要な書類を揃えるなど、複雑な作業が発生します。
多忙で手続きに時間がとれない方や自分が特例の条件に適用しているのか分からない方は、税理士への相談も検討してみると良いでしょう。
税理士へ依頼するには、依頼料がかかりますが、臨機応変に対応してもらえたり、今後の的確なアドバイスをもらうことが可能です。
自分が損をしないためにも、自分に合った方法で、正しく確定申告をしましょう。
(りびんまっちこらむへんしゅうぶ)
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