不動産を勝手に売却されるケースとは。売却されそうなときの対処法も紹介
不動産は原則として、名義人本人が自分の意思で手続きをしなければ売却できません。しかし、勝手に売却されてトラブルになっているのも事実です。
そこで今回は、勝手に売却されるケースとその対処法について解説します。
もくじ
不動産を勝手に売却されるケースとは
不動産を売却できるのは、基本的にその不動産の名義人本人だけです。言い換えると、名義人であればいつでも売却できます。したがって、法的に問題があるのは、名義人以外が売却をしたケースとなります。
それでは、具体的に不動産を勝手に売却されてしまう例を見ていきましょう。
- 配偶者名義の不動産を売却された
- 相続不動産を勝手に売却された
- 共有名義の不動産を売却された
- 親が勝手に売却した
配偶者名義の不動産を売却された
もっとも多い例が、別居や離婚をしたあとに配偶者が住んでいる家を勝手に売却してしまうケースです。
結婚をして不動産を購入するときに、名義を深く考える人は多くないでしょう。夫婦で住むのだからどちらの名義であっても問題ないと思ってしまうのです。しかし、どちらかの名義にしていると別居時や離婚時に問題になることがあります。
たとえば、夫が名義人になっているケースで考えてみます。離婚して妻が家に残り夫が家から出ていったとしても、その家の所有者は夫です。そのため、夫はいつでも家を売却できます。不動産に売却を依頼するのも夫だけでよいですし、売買契約も一人でできます。
売却するときに妻は同席する必要もありませんし、そもそも夫は妻に連絡する義務もありません。そのため妻が知らない間に、売却の話が進んでしまい売却されてしまうのです。このように夫の名義で家を購入した場合、妻は家を勝手に売却されるおそれがあります。
相続不動産を勝手に売却された
相続人が複数人いる場合、その中の一人が勝手に不動産を売却してしまうケースがあります。
しかし相続人が複数人いる場合、その全員に権利があるため一人で勝手に売却しても、その売買契約を無効にできます。厳密にいえば、自分の持分に限っては取り戻しが可能ですが、該当の不動産すべてを取り戻すことは売却することはできません。
たとえば、相続人がAとBの2人だけと仮定します。AがBの同意なしに勝手に相続不動産をCに売却した場合、Bは自身の持分である1/2を取り戻せます。つまり、BとCが1/2ずつの持分で不動産を共有することになります。
Bの立場からすると、今後不動産を売却したり、賃貸に出したりする際にはCの同意が必要になります。もちろん、Aと同じように持分だけの売却であれば、Cの同意は不要です。
共有名義の不動産を売却された
相続不動産と同様に共有名義の不動産も、一人の判断で勝手に売却できません。売却できるのは所有している持ち分までです。
つまり、4人で共有しているのであれば、不動産の4分の1までは一人の判断で勝手に売却できます。この時点では他の人に対して影響がないかもしれませんが、不動産を売却しようと思ったときに不都合が生じます。
該当の不動産を売却し、売却益を均等に割ろうと思っても、共有者の全員が売却に同意しなければいけません。もし4分の1を購入した人が反対すると、売却できなくなるのです。
もし、自分の持分だけを売却しようとしても売却価格が大幅に安くなるでしょう。そもそも1/4の持分が欲しいという買い手はまずいません。いるとすれば、将来的に残りの3/4の持分の取得を目指す、ディベロッパーなどの不動産会社です。
親が土地を勝手に売却した
親名義の土地に子が家を建てたあと、親が土地を勝手に売却するケースもあります。親は自分名義の不動産を売却しているため、法的にはなんの問題もありません。
しかし、土地の買主は建物があるので、自分で活用することができません。そのため、借地料を請求してくることが考えられます。借地料の年間相場は土地価格の2〜3%です。土地価格が3,000万円なら60万〜90万円となります。
不動産を勝手に売却されそうなときの対処法
それでは不動産を勝手に売却されないためにはどうしたらよいでしょうか。具体的な対処法を紹介します。
配偶者名義の不動産を売却されないために
配偶者名義の不動産を売却されてしまうと、取り返すのはとても難しいです。
なぜなら、持ち主が不動産を売却するのは法的になにも問題がないからです。そのため、配偶者が売却を取り消すことはできません。
売却されてからでは遅いので、売却されないようにあらかじめ準備する必要があります。具体的な準備を3つ紹介します。
- 登記識別情報を預かる
- 離婚時にしっかりとした契約を結ぶ
- 不動産が売り出されていないか監視する
登記識別情報を預かる
登記識別情報を預かる方法があります。登記識別情報は不動産を保有している証拠となるもので、これがないと不動産を売却するのが難しくなります。
ただし、登記識別情報は再発行ができないものの、司法書士が代わりとなる書類を作成できるため、完全に売却を防げるわけではありません。
離婚時にしっかりとした契約を結ぶ
離婚時に不動産を売却しないように契約を交わし書面化しておくことです。また、不動産の名義を二人のもの(共有名義)にしてもよいでしょう。所有権をもっておけば、急に家を失うといったことを防げます。
ただし離婚時の契約が思うように進まない場合は、「仮差押」を行うことで離婚問題が解決するまで不動産の売却ができないようにすることも可能です。仮差押えは、離婚する前に、相手の財産を一時的に差し押さえて動かせないようにする手続きです。これにより、相手が離婚前に分与対象財産を隠したり、無断で売却してしまったりすることを効果的に防ぐことができます。
不動産が売り出されていないか監視する
上記2つの方法を取れなかった場合、不動産が売り出されていないか定期的に監視する方法もあります。
不動産の売却が決まると止めることは難しいですが、売り出し中の期間であれば取り扱っている不動産屋に相談することで売却がストップできる可能性があります。ストップしている間に、もう一度元配偶者と話し合い、売却を考え直してもらうように訴えるとよいでしょう。
相続不動産や共有名義の不動産を勝手に売却されないために
不動産に複数の所有者がいる場合、誰か一人が勝手に売却しても、無効にできますが、持ち分の売却は成立します。
そして、一部が相続人以外の他人の手にわたってしまうと管理や売却時に問題となるケースがあります。そのため、他人に渡る前に相続人同士で話し合い、どのように処分や活用をしていくのが最善なのかを話し合いましょう。
親が勝手に土地を売却しないために
通常、建物付きの土地の土地だけを購入する人はほとんどいません。なぜなら購入しても活用できないからです。そのため非常に安価でないと売却できません。
もし親が土地を売却したいと考えているなら、安価で購入することも考えましょう。土地が建物に対して十分広いのであれば、必要な土地だけを分筆してもらうのも手です。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
誤字脱字や事実誤認などございましたら、ぜひともご指摘ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
人気ワード
離婚で家を財産分与 (27) 老後の住まい (24) 売れないマンション (16) 一括査定サイト (15) 離婚と住宅ローン (13) 海外移住 (11) 訳あり物件 (11) 家の売却 (11) 家の後悔 (10) 不動産高く売る (9) 実家売却 (9) マンション価格推移 (8) マンションの相続 (8) 移住 (7) アパート売却 (7) 不動産会社の選び方 (6) マンション売却の内覧 (6) 家の価値 (6) 離婚と家 (6) 売れない家 (5) お金がない (5) 空き家売却 (5) 離婚準備 (5) 離婚と家売却 (5) 農地売却 (4) 近隣トラブル (4) マンション買取 (4) 家の解体費用 (4) 売れない土地 (3) マンションか戸建てか (3) サブリース (3) イエウール (3) 不動産価格推移 (3) リビンマッチ評判 (2) シンガポール移住 (2)リビンマッチコラムを引用される際のルール
当サイトのコンテンツはどなたでも引用できます。 引用にあたって事前連絡などは不要です。 コンテンツを引用される際は、引用元が「リビンマッチ」であることを必ず明記してください。
引用ルールについて