相続登記の義務化と分割協議期限を10年に 所有者不明土地は解消できる?
所有者が亡くなりその後の登記がされないことで所有者が不明になる、いわゆる「所有者不明土地」の問題解決に向けて2019年11月に動きがありました。
一つは相続したことの届け出が義務化されること、もう一つは遺産分割に期限が設けられること。現在は中間試案の段階ですが、これによってどのように変わるのか、確認しましょう。
もくじ
所有者不明土地の問題とは?
所有者不明土地の問題は、所有者の死亡後に登記手続きが行われないことで起きています。具体的にはどんな問題なのか、ご紹介します。
義務がないために相続登記されない
土地の所有権は登記によって管理されていますが、登記情報は自動で書き換わるのではなく、あくまで新たな所有者が手続きをすることで更新されます。そのため、相続をした場合は相続人が登記をすることで所有権が移ります。
しかし現時点で相続登記は義務ではなく、行わなくても罰則がありません。そのため、相続する不動産に価値がなかったり維持費用がかかったり、負の側面が大きければ相続登記をせずに放置することができてしまいます。
相続登記がされないまま時が経てば、子・孫と相続する人がどんどん増えていき、もはや管理ができない状況になります。こうして所有者の特定が困難になった所有者不明土地はほとんど減ることなく増えており、問題となっています。
相続の放棄は難しい
解決策として、土地だけなどの部分的な相続放棄はできませんが相続財産すべてを放棄するというやり方もあります。
しかし財産の所有権がなくなっても、管理する義務は残ってしまいます。そのため、家庭裁判所への申立を経て相続財産管理人(代わりに管理してくれる人)が選んでもらわなくてはなりません。
結局のところ誰かが管理しなくてはならないので、現時点では、相続放棄は根本的な解決にはなりません。
所有者不明土地で起きている問題
所有者不明土地では管理者がいないため、いろいろなことが問題視されています。
例えば、土地に生える雑草が放置され周辺に迷惑をかけていることがあります。また、不法投棄などの不法行為が行われる場となっていることもあります。
いろいろな問題を抱える中で、万一災害などによってこの土地で問題が起きた時には、誰が責任を負うのでしょうか。
仮に所有者を特定するのにもいろいろなコストがかかり、責任を負わせるのにもいくつかの問題があります。このような点で、所有者不明土地の問題はそのままにしておくわけにはいきません。
届け出の義務化で解決を図る
義務がなかったことで所有者不明土地の問題は深刻化しています。もし義務化がされるとどんなことが期待されるのか、見ていきましょう。
義務化することで期待される効果は?
まずは相続登記を義務化することによって、登記がされないことによる所有者不明土地の問題はこれ以上増えないということが期待できます。
また、今回は登記だけでなく自治体への届け出も義務化する動きがあり、これによって固定資産税の課税が適正化される見込みもあります。
ただし、相続人は登録免許税などの金銭的な負担に加え、煩雑と言われる登記手続きが強いられることになります。そのため今回は、合わせて登記手続きの簡素化も進められているとのことです。
罰則などはある?
相続登記に期限を設定し、それまでに申請をしなければ過料に処すという方向で進んでいます。つまり期限を守らなければお金を払わなくてはならないということです。
10年で相続分に応じて分割できるように
今回は、所有者不明土地について分割協議の期限を実質的に10年とすることについて議論されています。所有者不明土地の問題と遺産分割の関係、そしてなぜ10年なのか見ていきましょう。
相続登記が速やかにされない問題
相続登記がされない理由の一つに、遺産分割協議がうまく行われないことがあります。相続人が多くいる場合、誰がどこにいるのか特定できないなどの事情で協議が進まず、分割できない、相続登記ができないという問題が起きます。
この対策として検討されているのが、分割協議の期限です。
10年を超えれば法定相続分に応じて分割できるようになり、相続登記されることが狙いとなります。
なぜ10年なのか
この10年という期間については、他にも3年や5年ではどうなのかという議論もされています。
しかし短すぎる場合、生前の介護などでどのくらい寄与(貢献)したかによって遺産の受け取れる金額が変わる「寄与分制度」が適用されない可能性がでてしまいます。一方で長すぎると、時間の経過でいろいろと事情もかわり、設けた期間があまり意味をなさなくなります。
こうした検討のもと、中間試案の時点で10年と定められたということでしょう。
まとめ
今は原案の段階ですので、これからさらに検討され、私達に周知され施行されるまでには時間がかかる見込みです。施行がされた途端に相続登記に駆け込む人々がいることも予想されますので、気になる場合には司法書士などに相談するといいでしょう。
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