不動産売却と健康保険|加入先で違う保険料への影響は?
私たちは、医療費の負担や給付金の受給などのサポートを受けるために継続的に健康保険料を支払っています。この健康保険料ですが、不動産を売却すると金額が上がってしまうのでしょうか?
ここでは、不動産売却が健康保険(医療保険)に与える影響について見ていきます。
なお、不動産売却によって健康保険料があがることはありますが、基本的には利益がでている必要があります。利益がでるかどうか、初めに調べておくのも良いでしょう。
もくじ
不動産売却で健康保険料が上がる場合は?
実は不動産売却で健康保険料があがるケースは限られています。まずはどんな場合に健康保険料があがるのか、見ていきましょう。
健康保険の3つの種類
健康保険には3つの種類があり、勤め先などによって加入保険が違います。
- 会社員が加入する「健康保険」
- 公務員が加入する「共済組合」
- 自営業者等が加入する「国民健康保険」
保険料があがるかどうかというのは、どの保険に加入しているかによって違います。それぞれの保険の特徴について、もう少し詳しく見ていきます。
健康保険
健康保険は企業に勤めている会社員が加入する医療保険です。健康保険の加入先は、勤め先が大手企業か中小企業かによって違います。大手の場合には企業が運営している組合健保、中小の場合には全国健康保険協会が運営している協会けんぽに加入しますが、いずれも健康保険に該当します。
共済組合
共済組合は公務員が加入する医療保険です。運営団体は違いますが、会社員の加入する健康保険と基本的には同じ扱いとなります。
国民健康保険
国民健康保険は自営業者やフリーランサーなど、会社などに雇用されずに働いている人が加入する医療保険です。国民健康保険の加入者の場合、ご自身の所得について給与所得とその他の所得に区分がないため、いろいろな収入をベースにして保険料を計算します。
健康保険料が上がる可能性があるのは、国民健康保険に加入している方です。ただし、国民健康保険に加入しているすべての方に影響があるわけではありません。もう少し詳しく見ていきましょう。
影響がある国民健康保険の所得割額
国民健康保険は医療分・支援金分・介護分の合計から成り、不動産売却に関係があるのは、医療分です。さらに医療分に関しては、以下のように分けられます。
- 平等割(世帯数に応じて計算する金額)
- 均等割(被保険者数に応じて計算する金額)
- 所得割(所得金額に応じて計算する金額)
不動産を売却すると、所得金額に応じて計算される所得割に影響があります。
所得割の計算
総所得金額(前年) − 基礎控除(33万円)× 税率
不動産を売却して利益があると、総所得金額が上がります。これによって健康保険料も上がるということです。
なお、国民健康保険は市区町村によって税率などの計算が違いますので、お住まいの地域の自治体に問い合わせるといいでしょう。
不動産売却で健康保険料が上がらない場合とその理由
ここで健康保険料が上がらない場合、つまり不動産売却益(譲渡所得)がない場合についてご紹介します。
譲渡所得について
はじめにご紹介した通り健康保険料が上がるのは「不動産売却益(譲渡所得)が出ている時」です。
ご存じの方も多いと思いますが、譲渡所得とは不動産が売れた金額ではなく、以下のように物件の売却金額から購入や売却にかかった費用などを差し引いて計算します。
この計算がプラスになる(譲渡所得)とき、国民健康保険の保険料に影響があります。譲渡所得については、こちらのコラムにて詳しくまとめていますので、ご興味のある方は参考にしてみてください。
会社員や公務員は標準報酬月額で計算する
ここで会社員の健康保険と公務員の共済保険について、なぜ健康保険料に影響がないのかも併せて見ていきましょう。
会社員や公務員の保険料は、給与をもとにした標準報酬月額によって計算しています。毎月の給料から保険料の控除(源泉徴収)がされているので、該当の方はよくご存じのことと思います。給与ベースでの計算の場合、不動産売却での収入(譲渡所得)が計算に含まれません。従って、保険料が増えることはないのです。
不動産売却における健康保険料と特別控除
不動産売却による譲渡所得については、一定の要件を満たすことで、特例が適用できます。特例によって課税対象となる譲渡所得を減額できれば、健康保険料が高くならずに済むかもしれません。具体的にどのようにして特例が適用されるのか、みていきましょう。
譲渡所得と特例(特別控除)
健康保険料も同じように、譲渡所得から特別控除したあとの金額で計算します。つまり、仮に譲渡所得があったとしても特別控除によって課税対象が減額されれば、健康保険料にあまり影響しません。結果として所得がでていなければ、国民健康保険に加入している方であって健康保険料はあがりませんので、ご安心ください。
国民健康保険料を減額できる3,000万円特別控除の適用要件
特例の中で使われることの多い3,000万円の特別控除の適用要件についてご紹介します。
3,000万円の特別控除の適用要件
- 自分が住んでいる家で、家と敷地などをあわせて売ること
- 住んでいない・家がなくなっている場合は、住まなくなってから3年経った年の年末までに売ること
- 親子間・夫婦間などの売買でないこと
- 売った年を含む過去3年で3,000万円の特別控除の特例を受けていないこと
- 売った年を含む過去3年でマイホーム買換えや交換の特例を受けていないこと
- 収用等の特例など他の特例を受けていないこと
上記のように、適用要件は詳細に分けられており、ご自身で確認するのは容易ではありません。もし該当しているかを正しく確認したい場合は、不動産会社もしくは税務署の窓口、税理士などに相談しておきましょう。
不動産売却では税負担を軽くする特例がいくつかあります。不動産売却における特別控除についてはこちらのコラムをご参照ください。
不動産売却した場合の健康保険料と介護保険料
不動産売却をした方の健康保険料についてご紹介しました。では、一定の年齢を超えると健康保険料に上乗せされている「介護保険料」についてはどうでしょうか。介護保険のしくみや保険料がかわるのかどうか、確認しておきましょう。
介護保険料とは
介護保険料は、社会保険の一つ「介護保険制度」に基づき健康保険などと同じように、万一のときにおける個人負担を軽減するための、国民で負担する公的な保険料です。
介護保険には、健康保険加入者のうち40歳以上全員の加入が義務付けられており、40歳の誕生日前日以降、生涯保険料を支払い続けます。
介護保険料は値上がりしない?
介護保険料の金額は所得によって決定します。つまり、不動産を売却して所得(譲渡所得)が増えれば支払う介護保険料も増えることになります。
しかし平成29年度からルールが改正され、以降の不動産売却による譲渡所得については介護保険料の計算に含まないこととなりました。これについてもう少し詳しく見ていきます。
所得税など税金の場合は、不動産を売却した際の譲渡所得には特例を適用できます。例えば、マイホームの売却における「3,000万円の特別控除」などを適用して、課税所得がゼロということもあります。一方で、従来の介護保険料の計算においてはこのような特例の適用ができず、所得額がそのまま計算の対象となっていました。
ルールの改正では、税金計算と同様に、介護保険料の計算についても特例適用後の金額をもって計算されるようになっています。この見直しによって、税金は発生しないにもかかわらず、売却翌年の介護保険料が一気に高額になってしまうというギャップが解消されています。
高齢者や被扶養者が不動産売却する場合の健康保険料は?
最後に高齢者や被扶養者の売却に関しては他にも意識すべき点があるので、ご紹介します。
後期高齢者の保険制度
後期高齢者については、後期高齢者医療制度が適用されることがあります。年金収入が主となる世代ですが、この場合には国民健康保険と同様に「所得割」の計算を考慮しなくてはなりません。
つまり、年金収入(雑所得)と譲渡所得を合算した総所得で保険料の計算がされるため、健康保険料が上がる可能性があります。
後期高齢者の売却時について詳細は下記コラムにて紹介していますので参考にしてみてください
被扶養者の健康保険料は上がる?
被扶養者が不動産を売却した場合、所得金額が上がって扶養から外れてしまい、それによって保険料が上がってしまうことが懸念されます。不動産売却と扶養(健康保険)についてはこちらのコラムにてご紹介していますので、参考にしてみてください。
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