アパート経営のリスクと対策11選|正しいリスクの捉え方とは
アパート経営は長期安定投資で節税になるなど、魅力がたくさんあります。しかし一方で「儲からない」「やめたほうがいい」とリスクを指摘する意見も多く、心配になる方も多いです。
アパート経営のリスクと対策、正しいリスクの捉え方について解説します。アパート経営を検討している方は参考にしてください。
もくじ
アパート経営のリスクと対策11選
アパート経営のリスク11選を紹介します。対策についても解説しているのでしっかりと確認しておきましょう。
空室
アパート経営でもっとも注意したいのが、空室により収入が減るリスクです。
空室の原因は、物件の老朽化や周辺環境の変化による需要減などが考えられます。たとえば、近隣に新しい物件ができると相対的な物件価値が下がるため、空室が増える原因になります。
家賃収入が減っても、住宅ローンや諸経費の支払いが減るわけではないため、空室はアパート経営の大きな課題です。
主な空室リスクへの対策は、次のとおりです。
- 需要のある土地を選ぶ
- 相場に見合う家賃を設定する
- 地域特性と入居者層を把握する
- サブリース契約※で家賃保証を受ける
- こまめなメンテナンスを行う
アパート経営を始める前に、まず需要のある土地を選ぶことから始めましょう。また周辺環境や地域特性からターゲット層を絞り込み、物件をアピールすると入居者を集めやすいでしょう。将来的にはメンテナンスやリフォームで、物件の魅力を保つ工夫も大切です。
家賃滞納
明確な決まりはありませんが、一般的に3カ月以上の家賃滞納をしないと入居者の強制退去は困難だといわれています。つまり、強制退去できるまでの期間は入居者募集ができず、無収入の状態が続きます。
家賃を滞納する原因のほとんどはうっかりによる払い忘れですが、なかには支払いが困難で滞納するケースもあります。
家賃滞納リスクへの対策は、次のとおりです。
- 家賃を自動振り込みかカード払いにする
- 入居時の審査を厳格化する
- 家賃保証会社やサブリース契約を利用する
うっかり忘れの滞納に対しては、家賃を確実に回収できるよう支払い方法を変更すればよいでしょう。入居時の審査は厳しくしすぎると入居者が集まらないため、注意が必要です。
また、家賃保証会社の加入を入居条件としたり、空室の有無にかかわらず一定の家賃収入を受け取れるサブリース契約を検討したりするのもよいでしょう。
家賃下落
一般に築年数が進むにつれアパートの家賃は下がり、築10年で新築時から約20%下がるといわれています。さらに近隣に新築の競合物件が建築されると、家賃を下げて対抗せざるを得ない場合も多いです。
家賃下落リスクへの対策は、次のとおりです。
- 周辺の需要動向を把握しておく
- ライバル物件を調査する
- 物件の「売り」を作る
家賃を下げないためには、物件周りの市場調査とニーズ把握は不可欠で、さらに「売り」による差別化も必要です。
近年人気の設備を例に挙げると、インターネット無料や宅配ボックス、浴室乾燥機が単身者・ファミリーともに人気です。不動産会社でもプランを提示してくれるため、相談するとよいでしょう。
建物老朽化
アパートは構造上、マンションに比べて劣化が進みやすく、修繕が必要になるほか、老朽化による空室リスクも上がります。
アパートの大規模修繕は通常10~15年で行われます。老朽化で物件の資産価値も下がってしまうため、放置するわけにはいきません。
アパート経営を始めた人のなかには、購入価格が安いからと築年数の古い物件を購入した結果、すぐに大規模修繕が必要になった例もあります。
建物老朽化リスクへの対策は、次のとおりです。
- こまめにメンテナンスを行う
- 適宜リフォームや建て替えをする
- あらかじめ修繕費を事業計画に盛り込んでおく
物件価値を保つには、こまめなメンテナンスで老朽化を遅らせ、必要な設備投資を行うことが重要です。アパートは老朽化するものと考え、修繕費を見越した事業計画を立てましょう。
立地
土地や物件を購入したときには立地や周辺環境がよかったとしても、年を経て環境が変化する場合があります。
立地や環境が変化する例として、近隣の企業や学校が移転してしまって入居需要が減る、新築の競合物件が建築される、交通機関の廃止や減便などで利便性が悪化するなどがあります。立地条件の悪化は、家賃を下げる要因になるため注意が必要です。
立地リスクへの対策は、次のとおりです。
- 土地から購入する場合は、将来的な需要が減らないエリアを選ぶ
- 土地がある場合には、周辺ニーズに見合う物件を建築する
いずれの場合にも、生活の便などの周辺環境を調べ、ライバル物件についてもリサーチすることが重要です。地域性から入居者層を想定し、ファミリー向けか、単身者向けか、駐車場はどの程度整備するかなど、ニーズに見合った物件づくりをすることが大切です。
また、エリアの今後の開発計画など人口の動向も把握しておくと、経営の方向性を見定めやすくなるでしょう。
入居者トラブル
マンションと比べてアパートは、壁が薄いため騒音トラブルが多い傾向にあります。入居者トラブルは当事者だけでなく、ほかの入居者の退去を招くおそれもあるため、軽視できません。
さらに、現在の法律では借主が守られているため、たとえ問題がある入居者でも基本的に貸主から退去を迫ることはできないと考えておきましょう。
入居者トラブルのリスク対策は、次のとおりです。
- 入居時の審査を厳しくする
- 管理を行き届かせる
可能であれば入居者とコミュニケーションを取り、入居者の意見を聞きながらそれに応えていくのがベストですが、もし手に負えなければ、管理会社に依頼して連携を強めることもひとつの方法です。
自然災害
地震や台風、火災などによる建物損壊のリスクへの考慮が必要です。アパートはマンションよりも構造が弱いこと、多くのオーナーが一棟運用で分散投資をしていないことから、一回の災害ですべてを失う可能性もゼロではありません。
自然災害リスクへの対策には、次のようなものがあります。
- ハザードマップで災害リスクを把握しておく
- 被害を最小限にするためにメンテナンスを怠らない
- アパートの建築時に地盤を改良する
- 保険で担保される内容を確認しておく
物件購入前に、ハザードマップでエリアの災害リスクを把握しておくことは重要です。また災害の種類により保険で担保・不担保となる範囲についても把握し、必要に応じて追加や掛け替えを行いましょう。
収益悪化
安定していると思われることの多いアパート経営ですが、収益悪化リスクもあります。
月々や年単位での収支が悪化する原因として、空室や滞納、家賃の下落による収入の減少や、修繕費などの想定外の出費によるものが多いです。収入の減少と出費が重なると、急激に収支が悪化してしまうケースも少なくありません。
収益悪化リスクへの対策は、次のとおりです。
- 事前に綿密なシミュレーションを行う
- 余裕を持ってローンを組む
アパート経営のシミュレーションを行う際に大切なことは、希望的観測ではなく、固定費や空室、修繕費や老朽化に伴う家賃下落などを見越して、厳しく行うことです。
また物件購入時に自己資金を残した状態でスタートすることで、経営危機に際しても臨機応変に対応できます。
サブリース契約
アパート経営でよく聞く、サブリース契約にもリスクがあります。
サブリースとは、サブリース会社(管理会社)が建物一棟をまるごと借り上げ、管理と家賃保証を行ってくれるサービスです。アパート管理を委ねながら空室でも家賃を保証されるため、忙しいアパート経営者から重宝されています。
しかし、サブリース会社による家賃減額請求や一方的な契約解除の要求など、よくトラブルになるのも事実です。サブリース契約のトラブルへの対策は次のとおりです。
- 家賃の見直し時期を確認しておく
- 契約前に複数のサブリース会社に相談して比較する
家賃保証といっても、周辺相場に合わせた家賃の見直しが行われることもあるため、契約内容は事前にしっかり確認する必要があります。
金利上昇
ローンを利用してアパート経営をする場合には、金利変動リスクがあります。
変動金利でローンを組んでいた場合に、返済期間中に金利が上がると、わずかな金利の上昇でも20~30年の長い間の支払総額は多大な金額になってしまいます。2023年現在日本は低金利のため、今後上昇する可能性も否定できません。
金利上昇リスクへの対策は、次のとおりです。
- 固定金利でローンを組む
- 借入時に自己資金を多くする
- 金利の低いローンに借り換えをする
ローンを固定金利で組む、頭金を多く入れる、繰り上げ返済をするなどで借入金を減らしておくことも重要です。
資金流動化
アパート経営には、資金流動化リスクがあります。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、不動産には売りたいときに売れないリスクがあるという意味です。不動産は買い手が見つかるまでに時間がかかること、ローンの返済状況によっては売却できない場合があるという特性があるため、注意が必要です。
資金流動化リスクへの対策は、次のとおりです。
- ローンを完済できるよう自己資金を多くしておく
- 将来の需要を見込める立地で購入する
- 売却に向けた出口戦略を考えておく
売却したいタイミングで売却するためには、残債が売却価格を上回るオーバーローンに陥っても、自己資金でローンを完済できるようにしておくことが肝心です。
家賃収入と物件価格の安定が続くと楽観的に考えず、あらかじめ売却も視野に入れた出口戦略を考えておきましょう。そのためにも将来の需要を見越した物件購入と、物件価値の維持・向上に努めることが重要です。
アパート経営における正しいリスクの捉え方
アパート経営にはさまざまなリスクがあります。
しかし投資である以上、リスクをゼロにすることは不可能です。ここからアパート経営をするときは、リスクをどのように捉えておけばよいのかについて解説します。
投資のリスクとは「変動の振れ幅」のこと
投資におけるリスクとは、本来「変動の振れ幅」を指す言葉で、危険を意味する言葉ではありません。
ハイリスク・ハイリターンは、損失の可能性は高いが利益も大きいこと、ローリスク・ローリターンは損失の可能性は低いが利益も低いことを指します。不動産投資はミドルリスクに分類されるため、損失の可能性は決して低くないといえます。
不動産はほかの投資に比べると振れ幅は小さいですが、リスクがないという意味ではない点に留意する必要があります。不動産投資は預金や保険のように「預けておけば安心」というものではないことを心得ておきましょう。
リスクとリターンは表裏一体
投資の基本に「リスクとリターンは表裏一体」という事実があります。
「不動産は安全だから投資する」と考える人も多いです。確かに不動産はほかの投資法より変動が少なく、リスクを抑えられます。しかしリスクが少ないということは、リターンも少なくなります。
逆に不動産投資でもリスクを取ることで、リターンを大きくする手法もあります。たとえばアパートは区分マンションと比べて、リスクと利回りがともに高いといわれるため、リターンを求めてリスクを取るアパート経営を選択する人もいます。
自身の資金力や将来設計に合わせ、リスクを取って大きな利益を得たいのか、リスクを抑えて堅実に運営したいのか、方針を定めて臨むことが、アパート経営で失敗しないためのポイントです。
投資は自己責任・自己判断で行うもの
投資の基本は自己責任・自己判断です。
自己判断ができるためには、投資に対する明確な資金計画やビジョンが必要です。ビジョンが明確でないと、「今後の運用のために修繕やリフォームを行う」「損失を切って売却する」といった重要な判断を誤ることにもなりかねません。
アパートをはじめとする不動産は、ほかの投資法と比べて初期投資が大きく、失敗すれば多大な損失を招きます。一方でアパート経営には、高利回りで長期の資産構築ができるうえに節税効果もあるなど、多くのメリットがあるのも事実です。
不動産の特性を踏まえつつ、ほかの投資方法と同様に明確なビジョンを持ち、自己責任・自己判断でアパート経営に臨みましょう。
アパート経営は事業であることを忘れない
アパート経営を行う場合は、事業者としての自覚を持つ必要があります。
管理会社任せで運用にタッチしない投資家もいます。しかし運用を丸投げしてリスクを自己管理できなければ、空室や価格下落などの悪い兆候にも気付けず、投資が失敗に終わるおそれがあります。
アパート経営で失敗しないためには、たとえば次のような場面で経営手腕を発揮しなければなりません。
- アパートを建てる前に立地の需要を徹底的に調査する
- 物件の「売り・強み」を作りアピールする
- 計画的なメンテナンスやインフラ増設の先行投資判断をする
- 適切な管理で空室や滞納、トラブルを防ぐ
- スタート時から売却を見越した出口戦略を立てる
これらはアパート経営の成功者が心がけていることで、同じように経営努力をすることで成功を手中にできるでしょう。一時的に損失を出してもリカバリーできる自己資金を確保するなど、長く運用を続けられる体制を整えたうえで、事業としてアパート経営に臨みましょう。
リスクを理解して備える
アパート経営にリスクがあるのは事実です。重要なのはリスクを理解し、リスクに備えることです。
たとえば、建物のちょっとした傷みでも、前倒しで修繕して物件の魅力を維持すれば、入居者の退去を防げるかもしれません。また、近隣に競合物件ができるとわかった時点で、早急に競合調査とニーズに合わせたインフラの再整備などの対策をとれば、家賃を下げずに入居者を獲得できます。
あらゆるリスクをシミュレーションすることと、実際にことが起こったときに最善の対処をする判断が、アパート経営の基本といえます。
リスクと不動産の専門知識を学習する方法には、書籍やセミナー、ブログ、YouTubeなどがあります。個人のブログやYouTubeからは、成功や失敗のリアルな情報を学べるため、身近な事例として参考にできるでしょう。
ただ独学で勉強しても「自分のケースに当てはまるのか」と、ピンとこないかもしれません。その場合には、信頼できる不動産会社など、不動産の専門知識を持つ人に個別に相談することをおすすめします。
また、すでにアパート経営をしているが、先行きが不安という方は管理会社を見直すこともひとつの方法です。リビンマッチ賃貸管理では賃料査定とアパート経営に関する相談が無料で受けられます。ぜひご活用ください。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
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