不動産のADをわかりやすく解説|仲介手数料との違いや相場、トラブル事例も紹介
不動産の賃貸取引で「AD」というワードはよく耳にします。
ADを有効活用することで空室期間を短縮できますが、十分に理解しないままADを利用すると、トラブルに巻き込まれてしまいます。
賃貸経営で失敗をしないためにも、ADは重要なポイントとして正しく理解しておきましょう。
もくじ
不動産のADとは
そもそもADとはどのようなものであるのかを知っておく必要があります。
ADの特徴や目的を理解し、活用することで効率よく賃貸経営ができるでしょう。
不動産仲介会社へ支払う費用の一種
賃貸物件の入居者を募集するにあたって、お盆や年末年始などの閑散期はどうしても反響が減ってしまいます。
しかし、閑散期でも広告を出すことで反響が見込めます。ADとは広告に使われる費用のことで、賃貸物件のオーナーが不動産仲介会社に対して支払います。
なお、ADとは「advertisement(アドヴァタイズメント)」の略称で「広告料」や「宣伝料」といった名称で呼ばれることもあります。
また、閑散期以外にも以下のようなケースでADを設定することがあります。
- 空室期間が長い
- 賃貸需要が高いエリアで周辺物件のAD設定率が高い(ADが設定されていない物件は紹介されなくなる)
- デザイナーズ物件や極端に部屋が狭いなど、一般的には入居者が決まりづらい
賃貸における仲介手数料は、宅地建物取引業法で以下のように定められています。
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍に相当する金額以内とする。
つまり、仲介手数料は借主と貸主の両方に請求できるものの、最大額は家賃の1カ月分です。
一方、ADは仲介手数料とは別に支払います。そのため、仲介手数料を上限まで支払った場合でもADを設定していれば、仲介手数料とは別途で支払いが必要です。
たとえば、AD3カ月と設定された物件を仲介した不動産会社は、借主から最大、賃料1カ月分の仲介手数料に加えて、貸主から賃料3カ月分の報酬が得られます。
ADの相場
仲介手数料の上限は法律によって定められていますがADの上限はなく、家賃の1〜3カ月分で設定されることが多いです。
また、ADが多ければ多いほど不動産仲介会社は広告を大々的に展開できることから早期契約につながりやすい一方で、必ずしも早期契約を約束するものではありません。
そのため、ADの設定は慎重にすべきといえます。
ADの効果
ADの目的は「早期契約」であることから、閑散期に利用するのが一般的です。
たとえば2月から4月は引っ越しする人が多く、広告を出さなくても契約になるケースは多いです。
しかし部屋が空室になってしまい閑散期になってしまうと、次の繁忙期まで空室が続いてしまうリスクがあります。
こうした経営リスクを避けるために、ADを設定するのが有効です。こうすることで満室の時期が長くなり、安定的な賃貸経営を実現できます。
また、不動産仲介会社からすると、ADのある物件とない物件では、ADのある物件を優先的に紹介する傾向があります。これは単純に、ADのある物件で成約できたほうが不動産仲介会社の利益が大きくなるためです。
不動産ADに関するトラブル事例
賃貸経営において重要な役割を担っているADですが、ときにはトラブルに発展することもあります。
実際にどのようなトラブルが起きるのかを把握し、事前に対策することが重要です。
早期契約につながらない
ADを利用すれば必ずしも早期契約が見込めるわけではありません。
たとえば、閑散期を理由にADを設定した場合でも、そもそも閑散期は物件を捜索する人が少なく、広告を展開しても効果が見込めないことがあります。
そのため、ADを検討する場合は不動産仲介会社としっかり打ち合わせし、広告のタイミングや内容について納得するまで擦り合わせをしておく必要があります。
広告の内容が不透明なまま請求された
広告はインターネットだけでなく新聞折込や街角の電子掲示板など、多岐にわたります。
こうした広告の内容をすべてオーナーが把握することは難しく、悪質な不動産仲介会社に依頼してしまうと広告媒体を勝手に制限されることもあります。
しかし、ADは媒介(入居者の募集)を依頼した時点で設定するため、あとから変えることは難しく、オーナーは定められた費用を不動産仲介会社に支払うことには変わりません。
この場合は費用対効果が低いADになってしまうおそれがあることから、不動産仲介会社の選定は十分に時間をかける必要があります。
違法性のある広告だった
実際の物件よりも極端に優良な画像を使ったり誤解のしやすい謳い文句で広告を出たりした場合、消費者庁が定める景品表示法に抵触するおそれがあります。
この法律は正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、事業者による不当な広告や表示を禁止したり、景品の提供などの制限・禁止することで消費者が自主的・合理的に商品やサービスを選択できることを目的としています。
不動産の物件広告は「明るい」や「駅近」といった不明瞭なワードが多く見受けられ、景品表示法に抵触してもおかしくない広告を見ることもあります。
こうした広告を公開することで消費者に損害が出てしまうと、消費者庁から是正命令が下されることもあります。
具体的には広告の停止処分や内容改編命令があり、その場合は早期契約を目的にADを設定していても、入居者が決まるまでに時間がかかるおそれがあります。
こうしたトラブルは不動産仲介会社のミスや悪質行為によって発生してしまいますが、オーナーとしても発生を抑制すべく広告内容をチェックしておくべきといえます。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
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リビンマッチ編集部
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