不動産競売とは?基本的な仕組みと概要を解説
不動産競売とは、債務者が借金の返済ができなくなった際に、担保として差し出された不動産を裁判所の主導のもと公開入札にかけて売却することです。競売物件には、マンション、一戸建て、土地など様々な種類があります。不動産競売は、民事執行法に基づいて行われ、地方裁判所が執行官を通じて手続きを進めます。
一方で、差し押さえられた不動産は、一般の不動産取引と比べて安く購入できる可能性があるため、投資目的で注目されています。しかし、物件の状態が悪かったり、借地権や賃借権が付いていたりと、リスクも存在するため安易に手を出すのは危険です。
本記事では、不動産競売の仕組みや流れ、メリットとデメリット、注意点などを詳しく解説します。不動産投資に興味がある方や、競売物件の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
競売の定義と目的
不動産競売とは、債務者が債務を弁済できない場合に、債権者の申立てにより、債務者の不動産を裁判所が強制的に売却し、その売却代金から債権者の債権の弁済を行う法的手続きのことを指します。競売の目的は、債権者の債権回収を図ることです。
競売にかけられる不動産の種類
不動産が競売にかけられるパターンは以下の通りです。
- 住宅ローンの支払い延滞による競売
- 公租公課(固定資産税など)の滞納による競売
- 個人や企業の借金返済の延滞による競売
- 詐欺や横領などの犯罪による差押えに伴う競売
民事執行法では、債務名義(判決や公正証書など)を得た債権者は、債務者の不動産を差し押さえ、競売の申立てができると定められています。
債権者にとっての競売の目的は、債権の回収ですが、債務者側から見ると、債務の清算と引き換えに不動産を手放すことになります。
競売を行う機関と関連法規
不動産競売を行う主な機関は、裁判所と地方自治体です。
裁判所は、民事執行法に基づき、債権者からの申立てにより競売手続きを開始し、競売の実施、売却許可、売却代金の配当などを行います。一方、地方自治体は、地方税の滞納がある場合に、地方税法に基づき、不動産の差押えや公売を行う権限を持っています。
不動産競売に関連する主要な法規としては、民事執行法と民法が挙げられます。民事執行法は、強制執行の手続きを定めた法律で、不動産競売の申立て、売却方法、売却代金の配当などについて規定しています。民法は、担保権に関する規定を設けており、抵当権や先取特権などの担保権が実行される際の競売手続きに影響を与えます。
また、競売の申立てができる者は、主に抵当権者や差押債権者などの担保権者です。これらの担保権は、債務者が債務を履行しない場合に、担保に供された不動産を売却し、その売却代金から債権の回収を図ることを目的としています。
不動産競売の流れと手順の中で、競売実施機関や関連法規の理解は非常に重要です。これらを踏まえることで、競売手続きがスムーズに進められ、適切な売却価格の実現や債権の回収が可能となります。
不動産競売の流れと手順
不動産競売の流れと手順は、以下のようなステップで進みます。
- 競売開始:債権者が裁判所に競売の申立てを行い、裁判所が競売開始決定を下します
- 現況調査と評価:執行官が物件の現況を調査し、評価人が物件の評価を行います。これらの情報は、競売手続きに必要な書類として公開されます
- 入札の準備:競売に参加する際は、事前に物件の調査や資金準備を行います。また、住民票や印鑑証明書などの必要書類を揃えます
- 入札:期日に裁判所で入札を行います。入札方法は、封印入札と期日入札の2種類があります。買受可能価額以上の最高価額で入札した人が、最高価申出人となります
- 売却決定:最高価申出人が買受代金を納付すると、裁判所は売却許可決定を下します。この時点で、所有権が移転します。
- 引渡命令:売却代金の納付後、裁判所は引渡命令を発令します。これにより、買主は物件の引渡しを受けられます。
競売に参加する際は、物件の現況や法的トラブルの有無を十分に調査することが重要です。また、競売物件は原則として現状渡しのため、リフォーム等が必要な場合もあります。競売の各段階で必要な書類や手続きを確認し、スケジュールに沿って着実に進めることが成功のポイントといえるでしょう。
競売開始までの流れ
不動産競売が開始されるまでには、まず債権者による差押えが行われます。差押えとは、債務者の財産を法的に拘束し、処分を制限することです。差押え後、債務者は原則として不動産を売却したり貸したりできなくなりますが、占有や使用は継続できます。
差押え後、債権者は裁判所に競売の申立てを行います。これを競売申立てといい、通常は差押えから1ヶ月以内に行われます。裁判所は申立てを審査し、問題がなければ競売開始決定を出します。この決定が出てから実際の入札開始まで、通常2~3カ月かかります。
競売を止めるには、この間に債務者が債務を返済する方法があります。また、債務者は競売申立てに対して不服を申立てる権利もありますが、認められるケースは限定的です。こうして差押えから競売開始決定までには通常2~4ヶ月程度を要することになります。
競売物件の情報収集と下見
競売物件の情報収集は、主に裁判所の公告や不動産情報サイト、競売専門の情報誌などから行います。裁判所のウェブサイトでは、競売物件の詳細情報や物件明細書、現況調査報告書などを閲覧できます。また、現地の下見は非常に重要です。物件の状態や立地、周辺環境を直接確認し、想定していた内容と相違がないかチェックします。その際は、建物の劣化状況、居住者の有無、境界線などに注意を払いましょう。
さらに、物件調査も欠かせません。法的な問題や権利関係、都市計画の制限、各種の公法上の規制など、トラブルのリスクを事前に把握しておく必要があります。
登記簿謄本や公図、建築確認済証、固定資産税評価証明書などを取り寄せ、綿密に調査することをおすすめします。これらの手順を踏まえることで、競売物件の購入判断がしやすくなるでしょう。
入札方法と注意点
不動産競売での入札方法は、執行裁判所に「買受申出書」を提出することから始まります。この書類には、入札者の情報、入札価格、買受代金の支払方法などを記入します。入札価格は、事前に提示される最低売却価額以上の金額を設定する必要があります。
適切な入札価格の決定には、物件の市場価値や修繕費用、利回りなどを総合的に考慮することが重要です。また、他の入札者との競合も予想されるため、予算の上限を設けつつ、適切な価格を見極めることが求められます。
入札の結果、最高価格を提示した入札者が落札者となりますが、その後の手続きや買受代金の支払いは定められた期限内に行わなければなりません。買受代金は一括払いが原則であり、融資を利用する場合は事前に準備しておく必要があります。
不動産競売では、物件の現状を十分に把握できないことや、瑕疵担保責任が免責されるといったリスクがあります。また、住人や不動産の明渡しに時間を要する場合もあるため、購入前に十分な調査と検討が必要不可欠です。リスクを理解し、適切な対策を講じることが、不動産競売での成功の鍵となるでしょう。
競売終了後の手続きと引渡し
競売終了後、最高価買受人は、原則として売却決定日から10日以内に競売代金を納付しなければなりません。納付方法は、執行裁判所の指定する口座への振込みが一般的です。
競売代金の納付が完了すると、執行裁判所は、買受人名義への所有権移転登記を嘱託します。登記が完了した時点で、買受人は不動産の新しい所有者となります。
その後、買受人は、不動産の明渡しを求めることができます。通常、売却決定日から6カ月以内に、旧所有者や占有者に対して明渡しを求める訴訟を提起します。明渡しが完了すれば、買受人は不動産を実際に取得し、自由に使用・処分できるようになります。
以上が、不動産競売における競売終了後の主な手続きと流れです。円滑に進めるためにも、競売代金の納付期限や明渡しのスケジュールを確認しておくことが重要です。
不動産競売のメリットとデメリット
不動産競売で物件を購入するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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メリットを詳しく見ていくと、競売物件は債務者の債務を回収するために売却されるため、一般的に市場価格よりも安く購入できる可能性が高いです。また、一般の不動産取引と比べて手続きがシンプルで、物件所有者との直接の交渉が不要なため、スムーズに物件を取得できるというメリットがあります。
一方、デメリットとしては、競売物件は原則として内覧ができないため、物件の状態を十分に確認できないリスクがあります。さらに、物件に瑕疵があった場合でも、売主に瑕疵担保責任を求められないため、買主が自己責任で対応する必要があります。
加えて、競売に参加するには、競売手続きや関連する法律知識が必要で、初心者には敷居が高いでしょう。また、競売に参加しても、他の買主との競り合いに敗れて物件を取得できない可能性もあります。
以上のように、不動産競売で物件を購入することにはメリットとデメリットがあります。競売物件の購入を検討する際は、これらのリスクを十分に理解し、自己の判断と責任で行動することが重要です。
競売で不動産を購入するメリット
不動産競売で物件を購入するメリットは、まず何よりも市場価格よりも安い価格で物件を手に入れられる可能性が高いことです。競売では需要と供給のバランスで価格が決まるため、競争率が低ければ大幅に割安な価格で落札できるチャンスがあります。
また、競売物件は「現状渡し」が原則のため、売主の瑕疵担保責任が免責されます。つまり、物件に隠れた瑕疵やトラブルがあったとしても、買主はそのリスクを負わずに済むのです。
一方で、物件の内覧が制限される、契約時の手付金が高額である、などのデメリットもあるため、メリットとデメリットを理解した上で検討することが重要です。
競売で不動産を購入するデメリットとリスク
不動産競売で物件を購入する際には、いくつかのデメリットやリスクがあります。
まず、物件の内覧や現況確認ができないことが大きなリスクです。占有者がいる場合、内覧が制限されるため、物件の状態を十分に把握できません。隠れた瑕疵や欠陥が後から発覚するトラブルもあります。
また、物件の引渡しまでに時間がかかったり、明渡しに応じない占有者がいる場合は、強制執行手続きが必要になります。これには費用と時間がかかり、トラブルに巻き込まれるリスクもあります。
さらに、競売物件は、契約時に所有権移転登記ができず、法的な制限がかかる場合もあります。抵当権や差押えなどの負担があると、それらの解除に時間を要します。物件の利用や処分に制約が生じるリスクがあるのです。
加えて、鍵の引渡しや設備の不具合など、通常取引とは異なる引継ぎ上のトラブルが起こりやすいのも競売ならではのリスクと言えるでしょう。
このように、不動産競売では思わぬトラブルやリスクが潜んでいます。購入前によく検討し、リスクを理解した上で参加することが重要です。
競売と任意売却の違いと選択基準
競売と任意売却は、どちらも債務者の不動産を売却して債務の返済に充てる方法ですが、その手続きや特徴には大きな違いがあります。
競売は、債権者が裁判所に申立てを行い、裁判所の主導で不動産を売却する方法です。一方、任意売却は、債務者が自ら不動産を売却し、その売却代金を債務の返済に充てる方法です。
競売のメリットは、債務者の同意なしに手続きを進められること、売却価格が市場価格よりも低くなる可能性があることなどです。デメリットとしては、手続きに時間がかかる、売却価格が予想よりも低くなるリスクがあるなどが挙げられます。
任意売却のメリットは、債務者が主体的に売却手続きを進められること、市場価格に近い価格で売却できる可能性が高いことなどです。デメリットとしては、債務者の同意が必要なこと、売却までに時間がかかる場合があることなどが挙げられます。
債務者が返済の意思と能力を持っている場合は、任意売却を選択するのが適切でしょう。一方、債務者に返済の意思がない場合や、任意売却では債務の完済が難しいと判断される場合は、競売を選択せざるを得ません。状況に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
競売を回避する方法と対策
不動産競売を回避するためには、早めの対策が肝心です。住宅ローンの返済が困難になった場合、まずは金融機関に相談し、返済条件の変更や一時的な支払い猶予を検討しましょう。それでも返済が難しい場合は、任意売却や債務整理といった選択肢があります。
任意売却とは、所有者が自主的に不動産を売却し、その売却代金で住宅ローンを一括返済する方法です。競売に比べ、売却価格が高くなる可能性があり、残債務が発生しにくいというメリットがあります。一方、債務整理は、弁護士に依頼して借金を減額・免除してもらう方法です。自己破産や個人再生、任意整理などの種類があり、状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
競売は、物件の価値が大幅に下がるリスクがあり、引渡しまでの期間が短いというデメリットもあります。できる限り競売は回避し、任意売却や債務整理といった方法で、前向きに問題解決を図ることをおすすめします。早めに専門家に相談し、最善の選択肢を探しましょう。
住宅ローンの返済が困難になった場合の対処法
住宅ローンの返済が困難になった場合、まず取るべき対処法は、金融機関への相談です。一時的な収入減少や支出増加により返済が滞る恐れがある場合、早めに金融機関に連絡し、返済条件の変更や一時的な返済猶予を相談しましょう。多くの金融機関では、借り手の状況に応じて柔軟に対応してくれます。
また、返済が困難な状況が長引く場合は、住宅金融支援機構の「返済条件変更制度」の利用を検討してください。この制度では、返済期間の延長や月々の返済額の減額などが可能です。
返済困難に陥る前の対策としては、住宅ローンの借り入れ時に、万一の場合に備えた「団体信用生命保険」への加入がおすすめです。これにより、借り手が死亡や高度障害状態になった場合、住宅ローンの残債務が保険金で補填されます。
住宅ローンの返済は長期にわたるため、ライフステージの変化に伴う収入の変動にも備えておくことが重要です。日頃から支出を見直し、貯蓄を心がけることで、不測の事態に備えましょう。万一返済が困難になっても、早期の対応と適切な相談により、競売を回避し、住み慣れた我が家を守ることが可能です。
任意売却による競売回避
任意売却は、競売を回避するための有効な手段の一つです。債務者が返済困難に陥った場合、金融機関との話し合いにより、不動産を任意に売却することで、競売を回避できる可能性があります。
任意売却のメリットは、競売に比べて高値で売却できる点です。債務者が自ら売却先を探すことで、市場価格に近い金額で不動産を売却し、債務の一部または全部を返済できます。また、競売による信用情報への影響を最小限に抑えられます。
一方、デメリットとしては、売却までに時間がかかる点が挙げられます。買主を見つけるまでに数カ月を要することもあり、その間も債務が増加し続けます。また、売却価格が債務額に満たない場合、残債務の支払いが必要になります。
任意売却の手順は、まず金融機関に相談し、任意売却の合意を得ることから始まります。次に、不動産業者に売却を依頼し、買主を探します。売買契約成立後、代金は金融機関に支払われ、残債務がある場合は債務整理を行います。
競売回避のための任意売却は、債務者にとって有効な選択肢ですが、メリット・デメリットを十分に理解し、専門家のアドバイスを得ながら進めることが重要です。
債務整理による競売回避
債務整理は、競売を回避する有効な方法の一つです。債務整理には主に、任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。
任意整理は、弁護士や司法書士を介して債権者と交渉し、返済額の減額や返済期間の延長を図る方法です。手続きが比較的簡単で、信用情報に影響が少ないというメリットがありますが、債権者の同意が必要という点がデメリットです。
個人再生は、裁判所を通して債務を整理する方法で、原則として借金が免除され、残債務を3年かけて分割返済します。手続きに時間がかかるものの、強制執行や競売を止められるメリットがあります。
自己破産は、裁判所に申立てを行い、債務の全てを免除してもらう方法です。債務から完全に解放されるメリットがある一方で、信用情報に大きな影響を与えるデメリットがあります。
債務整理を行うことで、債務の返済が滞っていた状態を解消し、競売に至るプロセスを止めることができます。ただし、債務整理の種類によってはデメリットもあるため、自身の状況に合わせて適切な方法を選ぶことが重要です。
2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
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