使い道がわからない土地でも税金を抑えて有効活用するには?
相続した土地やこれから相続するかもしれない土地を放置していると、固定資産税・都市計画税が毎年かかってしまいます。売却すれば負担はなくなりますが、買い手が見つからなかったり所得税がかかったりと多くの悩みがでてきます。
ここではできれば有効活用したいけど活用方法がわからないという方や、相続の節税対策を考えている方にいろいろな土地活用の種類やリスク、リターンをご紹介します。さらには、相続対策や相続税の仕組みについても詳しくご説明します。
もくじ
活用法の種類はいろいろある
お持ちの土地をどうするのか考える時、意外と選択肢が多くて迷ってしまうかもしれません。まずは3つの活用パターンを見ていきましょう。
自己活用
収益を上げるために駐車場や賃貸アパート・賃貸マンションなどを経営するのが自己活用です。単に賃料が入るだけでなく、税負担や助成金なども勘案できるので、選択肢の広い活用方法になります。この記事で扱う土地活用はこの自己活用のことです。
共同活用
主に土地信託と等価交換を指して共同活用といいます。信託銀行などに土地を預けて代わりに運用してもらうことを土地信託といい、所有権の移転がありません。土地の所有権を出資する代わりにマンションの区分所有権を得る、マンションデベロッパーと共同事業が等価交換です。
貸す
土地に何も建てることなく、そのまま貸すことがあります。土地を持っているだけでは固定資産税がかかるので、地代収入で収支のバランスを取ります。初期費用がないため、金銭の負担なく始めることができます。
自己活用は土地活用の中でも一般的で、税制で優遇されることも多いので、以下でさらに詳しく見ていきます。
リスクとリターンに応じた土地活用
活用方法に迷ったら、始める難しさや収益性を見ると違いがわかります。比較しやすいよう、内容が大きく異なる活用例を見ていきましょう。
アパート・マンション経営
収益性:中
節税効果:高い
賃貸アパートや賃貸マンションなどの賃貸物件を建てることで、賃料を得ることができます。空室リスクや経年劣化はあるものの、うまく管理できれば建設にかかった費用を数年間で回収できます。一方で、土地の固定資産税や相続税は抑えられますが、家賃収入には所得税がかかり、建物にも固定資産税がかかることになります。
駐車場経営
収益性:低
節税効果:小さい
駐車場は、場合によってコストをかけずに経営を始めることができます。収益性は他の活用方法と比べると少ないことや、固定資産税や相続税が更地の状態と同じで節税効果がないというデメリットはありますが、活用方法の変更がしやすいので、低リスクで始められます。
商業系施設経営
収益性:高
節税効果:低
コンビニなどの商業施設を建てて経営するという活用方法があります。経営の状況に大きく左右されますが、高利回りで資産運用できるのが特徴です。アパートやマンションといった住宅地のような節税ができないため、節税よりも投資という側面が強くなります。
実際に土地を活用するなら
実際の土地活用は他にもさまざまなものが考えられますが、立地や土地の形状、法令等によって利用制限があるなど、考慮すべきことがいろいろあります。まずはお持ちの土地について専門家に相談してみて、適切な方法を見つけてみてはいかがでしょうか。
相続対策に有効な方法は?
これまででいくつかの土地活用の種類についてご説明しましたが、相続を考えた場合はいかに相続税を抑えるかが重要になります。相続税に関する詳しい仕組みや計算方法などについては後述しますが、土地活用は相続税に対する節税効果が高く、特にアパート・マンション経営は相続税対策に有効であると言えます。
最近では高齢化社会の進行も背景に、相続税対策としてアパートやマンションといった賃貸住宅の経営だけでなく、高齢者施設の経営も有効的で人気があります。ここでは相続税対策に有効な方法とその注意点についてご説明します。
賃貸住宅
アパートやマンションなどの賃貸住宅は、所有する土地に賃貸住宅を建設し、入居者に貸し出すことで家賃収入を得る方法です。
同じ賃貸住宅でも、平屋のような数戸建ての小規模な住宅から大型マンションのような大規模なものまで、土地の大きさや投資額に応じてさまざまな計画を検討します。利回りも、建築額によりますが、おおむね5-15%程であり10年以内には投資資金を回収できることが多いです。
賃貸住宅の建設はハウスメーカーが得意とする傾向があります。ハウスメーカーによってアパートが得意なのか、マンションが得意なのか、都心に特化しているのか、地方も対応可能なのかなど得意不得意があるので、不動産会社にご自身が考えている賃貸住宅のイメージを相談することでお勧めのハウスメーカーを紹介してもらいましょう。
なお、建設後は賃貸住宅を管理しなければなりません。賃貸住宅の管理方法は全て自分で管理する方法から一部の業務を不動産会社に依頼する方法、賃貸住宅を一括して不動産会社に借り上げてもらい全て任せる方法などがあります。賃貸住宅の場合は後のことも考えておく必要があります。
高齢者施設
高齢者施設の土地活用とは、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を建設し、高齢者の介護や見守りサービス付きの住宅を介護事業者や不動産業者とともに経営する方法です。
賃貸住宅と比べ、高齢者施設による活用法はハードルが高いと言えます。というのも、自治体の開発許可が必要な場合や、一定規模以上の土地と建物が必要になり投資額も高額になる場合があるためです。
しかし賃貸住宅と比べ、高齢者への介護や見守りを社会に提供するため、社会貢献性が高いといえます。また投資面でみると高齢者施設へのニーズは高まっており、高い利回りが期待できます。
相続税対策のための土地活用における注意点
相続税対策のための賃貸住宅と高齢者施設をおすすめしてきました。しかし相続税税対策のために賃貸住宅を建設してもその後の経営が上手くいかなければ負の遺産を相続してしまうことになりかねません。
建設費や運用費用には多額の資金が必要になるので、ご検討の際は実績がある不動産会社に相談し、その土地にあった活用のプランを立てててもらいましょう。
相続税と土地活用
相続税は財産の額が大きければ大きいほど、税率が高くなります。そのため、相続税の節税対策の基本はいかに財産の額を少なくするかということです。
相続税の対策に土地活用が有効だとされてきた主な理由は、現金で相続するよりも不動産で所持したほうが財産は少なく評価されるためです。
他には後述しますがアパートやマンションに対して小規模宅地等の特例から土地の評価額を減額することもできるので、相続税対策として賃貸住宅は有効だと言えます。
現金を不動産に変えた場合はどのように資産を評価されるのか、具体的に節税できる割合について見ていきましょう。
現金で土地を購入して相続する
相続をする資産の中に現金がある時には、現金のまま相続する方法以外に、土地や建物を購入するという選択肢があります。土地や建物を購入した場合、相続税は以下の評価額をもって計算されることになります。
評価額 | 時価に対する割合(%) | |
---|---|---|
宅地 | 路線価 | 約80 |
建物 | 固定資産税評価額 | 約70 |
相続税の計算をする時は、宅地は路線価(路線価がない場合は固定資産税評価額)を、建物は固定資産税評価額を使って計算します。現金で相続する場合に対して、2~30%程度相続税を抑えることができます。
例えば現金を1億円持っている人が1億円の価値を持つ不動産を買った場合、評価額は8,000万円になります。そうすると2,000万円分の節税対策になります。
土地にアパート(マンション)を建てて相続
すでに土地がある場合は、そこに家屋を建てることで節税することができます。更地(課税標準)時の固定資産税・都市計画税に対して、以下のとおり軽減されます。
200平米以下の部分 (小規模住宅用地) |
200m平米超の部分 (一般住宅用地) |
|
---|---|---|
固定資産税 | 6分の1 | 3分の1 |
都市計画税 | 3分の1 | 3分の2 |
住宅一戸に対して、200平米を下回っていると小規模住宅用地になります。アパート経営に関しては戸別に広さを計算するので、多くが小規模住宅用地に該当し、この特例を利用できます。
相続した土地の活用が困難な場合
「相続したものの、法律などの制限があって活用しにくい土地だった」ということがあるかもしれません。ここで相続した土地や古い家屋に関して、どのような問題があって、どういった解決方法があるのかご紹介します。
接道義務の問題
土地活用が困難なケースとして多いのが、接道義務の問題です。 建築基準法第43条では、原則として幅員4m以上の道路に対して2m以上接している土地でなければ、建物が建てられないように決められています。この場合は土地を後退させるセットバックや周辺の土地の購入などが必要になる場合があります。
古い家屋を相続した場合
接道義務を満たしていない古い家屋を相続した場合、取り壊しても再建築ができません。これを既存不適格といい、仮に更地にしても活用方法に制限があります。
リフォームは可能
再建築はできませんが、梁などを残したリフォーム・リノベーションならできます。新たに不動産を建築する時は、自治体や指定機関で建築確認をする必要があります。既存不適格の物件はこの建築確認が通らないので、これに該当しない範囲で改築できます。
更地にして駐車場として運用
建物は建築できませんが、駐車場として活用することができます。駐車場の場合は固定資産税が通常通りかかりますが、収益が見込める場合には有効な活用法だと言えます。
活用が難しい土地についても、専門家に相談することで活用方法を提案して貰えることがあります。売却以外にも選択肢があるので、まずは相談してみてはいかがでしょうか?
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