農地転用できない土地とは?見分け方4選と転用不可地の収益化方法
農地を所有している方の中には、農地転用したいと考えている方もいるでしょう。しかし、そもそも農地転用できない土地の場合は、諦めるしかありません。
農地転用できる土地とできない土地の見分け方や、転用できない農地と判明した場合の収益化方法を解説します。
もくじ
農地転用とは農業用の土地を農業「以外」の土地に転用すること
農地とは、農業を行うために使われる土地のことです。主に米を育てる田んぼ、野菜や果物などの農作物を栽培する畑を指します。
農地転用とは、農地を住居や駐車場など農地以外の土地に変えることをいいます。農転と略されることもあります。
農地転用にはメリットがありますが、実際のところ、簡単にはできません。その理由を解説します。
なぜ自由に農地転用できないのか
農林水産省の「令和4年耕地面積(7月15日現在)」によると、耕地面積、つまり農作物を育てるための土地は年々減少しています。日本全土における2022年の耕地面積は432万5,000ha(ヘクタール)で、2021年の面積より2万4,000ha減少しました。
農作物の収穫量が減少し、それに伴い食料自給率も低下しているため、食料の大部分を海外からの輸入に頼っている状態です。
輸入が途切れた場合は食糧難になるため、食料の安定供給は大切です。そのため、耕地面積の減少を食い止めるために、農地法という法律で農地は保護されています。
また、農地である田んぼや畑を住居にする際は、土地を整地して住居を建てるだけですが、農地以外の土地を農地に変えるのは手間がかかり費用負担も大きいです。たとえば、住居を田んぼや畑(農地)にするには、解体して更地にし、耕して土地の目的である「地目」を農地へ変更する必要があります。
耕地面積の減少を食い止めるため、また農地以外の土地を農地に変更するのは農地転用以上に大変なため、自由に農地転用できないのです。
農地法とは
農地法は、要約すると主に次のような内容が記載されています。
条項 | 内容 | 許可主体 |
---|---|---|
第三条(権利移動) | 農地を耕作目的のために、売買・貸借する場合 | 農業委員会 |
第四条(転用) | 農地を農地以外の土地として使用する場合 | 都道府県知事(指定市町村は市町村長) |
第五条(権利移動・転用) | 農地を農地以外の土地として売買・貸借する場合 |
第三条と第五条に記載されている権利移動とは、自分が所有している農地の所有権を他人に譲り渡すことです。
農地を転用・権利移動する場合、基本的には許可を取る必要があります。
農地転用・権利移動の許可を受けないとどうなるのか
農地を許可なく、転用・権利移動するとどうなるのか要約すると次のとおりです。
法条 | 内容 |
---|---|
第五条第三項 | 権利設定や権利移転の契約は無効 |
第三条第七項 | |
第六十四条第三項 |
|
つまり、農地を許可なしで転用・権利移動すると、農地に戻す(原状回復)必要があったり、工事停止などでお金が余分にかかったり、刑務所に入る必要があったり、と散々な目に遭うということです。
政府としては、それほど農地を大切に扱ってほしいのです。
農地転用できる土地とできない土地の見分け方4選
農地がどのくらい大切かわかったところで、次は農地転用できる土地とできない土地の見分け方を4つ紹介します。
農地が市街化区域内か、市街化調整区域内か
市街化区域とは、すでに住宅地を形成している区域、あるいは約10年以内に市街化を目指している区域のことです。
対して、市街化調整区域は、市街化区域の逆で市街化を抑制している区域です。
一般的に市街化区域内なら農地転用できますが、市街化調整区域内なら農地転用できません。市街化調整区域は自然環境や農業の保護を重視していることが多く、市街化を抑制しているからです。
ただし、市街化区域内なら市街化を促進していることもあり、比較的簡単に農地転用できます。農地法により市街化区域内の農地は、農業委員会への届出だけで農地転用できます。
転用が制限されているか、制限されていないか
農地は、場所によって次のように区分されています。
区分 | 概要 | 転用の難易度 | 転用の制限有無 |
---|---|---|---|
農用地区域内農地 | 農業振興地域整備計画に基づいた、特に農業としての利用価値が大きい農地 | 最高★★★★★ | 制限有り |
甲種農地 | 市街化調整区域内の特に良好な条件がそろった農地 | 高★★★★☆ | 原則、制限有り(条件によっては制限無し) |
第1種農地 | 農地として良好な条件がそろった農地 | 中★★★☆☆ | 原則、制限有り(条件によっては制限無し) |
第2種農地 | 農地だが今後市街化として発展が見込める農地 | 低★★☆☆☆ | 条件を満たせば制限無し |
第3種農地 | 市街化区域内あるいは市街化が進んでいる区域にある農地 | 最低★☆☆☆☆ | 原則、制限無し |
「農用地区域内農地」「甲種農地」「第1種農地」「第2種農地」「第3種農地」の順に、農地転用の制限が緩くなります。
基本的には、自分が所有している農地が第2種農地あるいは第3種農地に属しているのなら、市街化が進んでいることもあり農地転用は可能です。
一方、それ以外の区分では、農業を促進していることもあり、農地転用は難しいでしょう。
農用地区域内農地は、農業振興地域からの除外申請をすることで転用可能です。しかし、周辺の環境が条件の1つとして挙げられるため、辺りが農地なら諦めざるを得ません。
甲種農地は、厳密には市街化調整区域内の土地改良事業が8年以内に実施された農地のことです。例外はあるものの、転用の条件を満たすのは厳しいのが現状です。
第1種農地は、10ha(ヘクタール)以上の集団農地で土地改良事業などの対象となった農地のことを指し、甲種農地と同様に例外はあるものの、転用の条件を満たすのは厳しめです。
これらを要約すると、周辺環境の大半が住宅なら農地転用に制限はなく、農地なら制限があるといえます。
一般基準を満たしているか、満たしていないか
農地が第2種農地あるいは第3種農地に属しているにも関わらず、農地転用の許可がもらえないケースがあります。
農地転用の一般条件としては、主に次のようなものが挙げられます。
- 資金や信用があるか
- 農地転用後、速やかに土地を有効活用するか
- 周辺の農地に支障を及ぼさないか
- 農地転用の手続きに不備はないか
第一に農地転用の実効性があるか、計画性があるかが大切です。途中で資金がつき、中途半端に工事が終わってしまっては、周辺の農地に支障が及ぶためです。
また、農地転用したにも関わらず、すぐに利用せず放置してしまう場合は農地転用の許可をもらえません。
さらに、農地転用の可否としては、農地転用後に周辺の農地に支障を及ぼさないかも考慮されます。たとえば、宅地造成のみの工事で土砂の流出や崩壊の危険があったり、農業用排水施設に障害物が設置されていたりすると、農地転用後に周辺の農地に支障を及ぼすと判断されます。
いずれにせよ、農地転用の手続きに不備があると、ほかの基準をクリアしても農地転用の許可は降りません。何の書類を用意すればよいか、よく確認しておきましょう。
転用後は農業関連の施設・公共性の高い施設か、それ以外か
甲種農地と第1種の農地については条件を満たすことで、例外として農地転用が認められます。
農地転用後、主に次の施設なら転用可能です。
- 農業用施設
- 農畜産業用加工施設・直売所など
- 農業の振興に手助けとなる施設
- 農業体験施設・農業従事者のための研修施設など
- 公共性の高い施設
- 非常災害時の施設・救命用の施設など
- 市街地では建設困難な施設
- 老人保護施設・火薬庫など
転用後、農業関連の施設や公共性の高い施設などを建てる場合なら、農地転用が許可される可能性は高いです。
農地転用できない土地を収益化する方法
農地転用できない農地でも、収益化する方法は主に4つあります。
- 市民農園を開設
- 農地集積バンクの利用
- 農地を貸与・売却
- 土地活用会社に相談
ここでは、これらの方法を詳しく解説します。
市民農園を開設
市民農園は、農林水産省によると以下のように定義されています。
自家用野菜・花の栽培、高齢者の生きがいづくり、生徒・児童の体験学習などの多様な目的で、小面積の農地を利用して野菜や花を育てるための農園のことをいいます。
引用:関東農政局「都市農業の振興・市民農園とは」
つまり、市民農園とは自分で植物を栽培したり、農業体験をしてもらったりする目的で利用する農園のことです。
市民農園を開設する際は、次の3つの方法から選ぶ必要があります。(参考:農林水産省「市民農園の開設方法」)
- 市民農園整備促進法による方法
- 特定農地貸付法による方法
- 農園利用方式による方法
それぞれ開設する手順や方法などが異なります。たとえば、市民農園整備促進法による方法を選んだ場合、開設場所は市民農園区域内 ・市街化区域内のみに制限されており、休憩施設やトイレなどの施設を設置する必要があります。
ほかの方法と比べて制限がかかるものの、農地法の転用手続きや許可は不要なので、転用の手間が省けます。
農地集積バンクの利用
自分で農地を扱うのが難しい場合は、農地集積バンクを通して他人に貸し出す方法があります。
農地集積バンクとは、農地を貸したい人と借りたい人をつないでくれる農地のマッチングサービスのことで、主に地方公共団体(自治体)が運営しています。
農地集積バンクを利用する主なメリットは、次のとおりです。
- 農地は公的機関が預かる
- 地方公共団体から直接、賃借料・交付金を受け取れる
- 税制優遇が受けられる(固定資産税・相続税・贈与税)
特に農地を利用する機会がない場合、農地集積バンクを利用してみるとよいでしょう。
農地を売却・貸与
農地を借りたい農家や農業法人が近くにいる場合、売却・貸与を視野に入れるとよいでしょう。
ただし、農地法の規定より権利移動が発生するため、農業委員会の売買・貸借の許可が必要です。また、貸与期間は最大50年間と長期の貸与が可能です。
農地の売買・貸借の手順は次のとおりです。
- 農業委員会に農地の売買・貸借申請を行い、許可をもらう
- 買主・借主と相談して取り決めを行い、売買契約・賃貸契約を結ぶ
農業委員会に許可を得てから契約を結ぶところは注意しましょう。
土地活用会社に相談
農地について次のような悩みを抱えている人は、土地活用会社に相談してみましょう。
- どのように農地を有効活用すればよいか
- 自分の農地がどの区分に属しているか
- 具体的にどのやって収益化すればよいか
土地活用に詳しい専門家に頼れば、自分の農地特性を最大限引き出してくれる提案をしてもらえるでしょう。具体的には、農地をレジャー施設や観光地として活用したり、賃貸用地として開発したりするといった提案です。
専門家からの有益なアドバイスにより、最善の土地活用に近づけます。農地の土地活用についてお悩みの方は、ぜひリビンマッチで土地活用プランの一括請求をしてください。
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